96.雨恋(あまごい)

 いえ、違います。悲劇のヒロインぶりたくて、梅雨の時期にも関わらずびしょ濡れになりながら登校してるわけじゃないです。ただ、傘を差し伸べてくれる手を、誰かを私は待ってるんです。ひとつ傘の下ふたりで歩く──その近さを私は求めてるんです。


 そっと折り畳み傘を通学カバンにしまって、私は今日も雨の中、登校する。そんな運命の人が見つかるまで、雨よずっと降ってくれと祈りながら。

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