14.地の文の気持ち

「生まれたくて生まれた訳じゃねぇ、お前が勝手に生んだんだろ」


 桃太郎はぼくに怒っていた。そう、地の文のぼくに。たしかに桃太郎が生まれたのは、ぼくのせいだ。だが、言い訳させてほしい。地の文であるぼくは、筆者の正当な意志の継承者であり、代弁者である。


 だから、いくら勝手に「桃から生みやがって! ふつうの子どもにしてくれよ!」とか「もっとマシな名前はなかったのか!」なんてぼくに言われても、困る。


 そうだ! これはどうだろう。川から流れてきたのはミカンにして、赤ちゃんが入らないサイズにすればいいんだ。


 地の文の職権を使って、テンプレにはならないようにしよう。ぼくは、初めてそう思った。

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