ヤンデレ妹との刺激的な生活

第1話 『朝からイチャイチャ......してねーよ!』

 いつもなら、学校のある平日であるなら、今頃は憂鬱な気持ちを携えて朝食を口にしている時間だろう。だけど、今日は土曜日で、部活にも所属していない俺は、早く起きるのも、寝続けるのも自由なのだ。

 親は海外出張で家にいないし、妹も休みの日の朝は怠けていたいタイプだ。だから、俺の眠りを妨げるものはないのだ。

 

 ──と、思っていたのだが、驚く展開がこの後に待ち受けていた。


 まず、俺はカーテンの隙間から差し込んでくる太陽の光にイラつきながら、身体の位置をずらすことでそれを避けた。素直にカーテンを閉めればいいのだろうが、目を瞑りながら、布団に入りながら出来る回避方法があるのなら、そちらを取りたくなってしまうのは仕方のないことだ。 


 そうして、身体をずらすと、俺は一つの違和感を感じたんだ。


「......ん?」


 と、思わず声を漏らしてしまうほどの違和感──何も無いはずの布団に、なにかがあるのだ。どういうことかというと、本来、この布団の中にあるのは俺の身体のみで、女の子が抱いているようなぬいぐるみや、二次元大好きな人が家宝のように抱きかかえている枕は存在しない。だから、壁側とは逆の方向に身体をずらしただけでは、何かにぶつかることはあり得ないのだ。


 ぶつかる。そう、ぶつかったのだ。つまりは、ぬいぐるみや抱き枕のような押せば動くものではない。しかし、全く動かないと言う訳ではなく、力強く押せば動きそうな感覚があった。


「──って、なんで俺の布団で寝てるんだ」


 俺は目を開けて、こちら側を向いて寝ている妹の顔に疑問を投げかけていた。もちろん、寝ているため、彼女から何かしら応えが返ってくるわけがない。


 藤村ふじむら 花織かおり。俺の一つ下の、高校一年生で、俺の妹。血が繋がっていないという、ラノベの王道設定ではなく、正真正銘血の繋がった妹で、親が海外出張に行ってからは、妹と二人で暮らしている。俺が苦手でできない料理や、俺がさせてもらえない洗濯をしてくれている頼りになる妹だ。


 そんな妹が、別の部屋──つまりは自分の部屋で寝ていたはずの妹が、なぜか俺の布団の上で寝息を立てている。

 

 一瞬、逆なのでは?俺が妹の部屋に忍び込んだのでは?なんて思ったが、確認してそれが無駄な心配だったことが分かった。

 

 兎にも角にも、目の前で寝息を立てている妹に話を聞かないと、何も始まらないので、起こすことにした。


「おい、花織?かーおーりー」


「......ん?お兄ちゃん──おはよう♪」


 挨拶はしているが、まだ眠そうな妹は、目を擦っている。


「おはよう、妹よ。起きていきなりだけど、なんで俺の布団で寝てるんだ?」


「えー?一緒に寝たかったから?」


「俺に聞かれても困るんだけど......。はぁ、特に理由はないんだな、まったく。俺は今から二度寝するけど、花織はどうする?」


「ふぁ~......私も寝るよ~」


 欠伸を一度して、再び瞼を閉じた花織。どうやら、自分の部屋で寝る気は無いらしい。

 俺は寝起きの気怠さから、説得することを放棄し、部屋を出ようとした──のだが


「私を置いてどこに行くの?」


「お前は付き合いたての彼女か」


───花織が俺の服を掴むことで阻止された。


「トイレと水飲みに行くんだよ」


「そして......そのまま帰って来ないんだね......」


「なにその不穏な未来予知!」


「違うよ!私を置いてどっか遊びに行くんでしょ?!」


「さっき寝るって言ったよね?!っていうか今まだ7時だからコンビニくらいしか行くところねーよ!」


 さっきまで眠そうにしてたくせにいきなり大声を出し始めた花織に負けじと声を張り上げたが、寝起きの喉にはあまりよろしくない。

 

「すぐ戻って来るから!」


 そう言って無理矢理花織の指を引き離し、目的を達成するために部屋を出た。



 

 部屋に戻ってくると、花織の姿がなかった。


「あれ?自分の部屋に戻ったか」


 これでゆっくり寝れる。布団の中に入り、冬の寒さの所為で冷たくなった足を憎みながら眠りにつこう──としたら、足になにか柔らかいものが当たった。

 冷たい足から伝わる程よい熱に嫌な予感が俺の脳を駆け巡る。

 その予感が的中したのだろう、その柔らかいものは動き出し、俺の全身を覆い始めた。


「か、花織さん?」


「なぁに?お兄ちゃん」


「服はどこやった?」


「脱いで、布団の中で温めてるよ♪」


 いやに柔らかい感触と熱が全身に伝わるものだから、まさかなと思ったが予想通りだったみたいで、花織は今俺の布団の中で全裸になっているらしい。


「なんで裸になったか聞いてもいいか?」


「お兄ちゃんと既成事実をつくるため」


「......俺がそれを許すとでも?」


「うん♪だって────」


 突然布団の中から這い上がって来た彼女は俺の唇に自分の唇を重ね合わせた。


「──私たち愛し合ってるし。それに、お兄ちゃんのここテント張っちゃってるよ?」


 朝+柔らかい肌の感触に俺の聖剣がうずいてしまったようだ。というかコラ、つんつんするんじゃない。

 俺は花織の腕を掴み聖剣から遠ざけさせる。


「もう、こうなりゃやけだ」


 俺は花織の脇と二の腕の間から背中の方へ手を回し、抱きしめる。こうすれば聖剣に手が伸びることはない。


「ほら?やっぱり大好きじゃん」


 なんか喜んでるみたいだけど、俺は無視させてもらう。早起きしたことによるものと無駄な疲労とで眠気が迫ってきてるんだ。寝かせてくれ。


 そうして花織を抱きしめたまま目を瞑る。


「ん~?寝ちゃうんだ」


 花織は器用に足で俺のズボンを下げ始める。そして、これまた器用にパンツまで下げようとしたので足で、彼女の足を挟んでやる。これで何もできまい。

 そう、勝ち誇った俺は気付いていなかった。彼女にはまだ攻撃方法が残っていることに......。

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