【祝!1000PV!】子供のころヒーローに憧れた少年は、大切な人のため再びヒーローになると誓う~転校してきた銀髪美少女の言葉は俺しか分からない~

マッソー!

第1話 プロローグ ヒーローに憧れた少年―①

それはある夏の日の記憶。

俺、冬月 司ふゆつきつかさは両親との旅行で日本のある草原に来ていた。

辺り一帯に自然が生い茂っているこの草原は土地開発などによってなくなりつつある桃源郷、もしくは古くから人が愛していた理想郷のような場所だった。


「お父さんたちここ、きれいな場所だねー!」

「そうだろう。ここはお父さんたちの思い出の場所なんだ。」

「どんなことがあったの!?」

「もう少し司が大きくなったら教えようかなー?」

「やったー!」


今思えば上手にはぐらかされていたんだと大きくなった司は思う。

ただ、純粋無垢だったこのころの司は両親たちの話に少しも疑問に思わなかった。


この年頃の子供は好奇心おおせいで司も例外なく、そんな少年だった。

司は今まで見たことのないような、絵本のような場所に来ていたことで落ち着きがなくなっていた。少しでも早くこの草原を駆けまわりたい!

そんな気持ちが司にはあった。


「それじゃ俺、すこし外で遊んでくるね!」

「気を付けて行くのよー?」

「分かってるって!」


そうして司は草原の奥に走り出す。


(天気がとても気持ちがいいな…雲が一つもないや!)

草原に生い茂る草がそよ風によって小さく靡く。

(こんな日にこんなところに来れて嬉しいな!)


しばらく草原を駆けまわると大きな岩のある開けた土地に出た。

(大きな岩だな…どうしてこんなところに?)


周りには他になにもなく、どうしてこんなところに岩があるのか司には分からなかった。その大きな岩はごつごつとした岩肌をしており、この草原には溶け込めていない、異物のような岩だった。


(なんかこの岩寂しそうだな…)

まだ幼く、純粋無垢な子供だった司はそんな呑気なことを考える。

しかしその考えはあながち間違ってはいなかった。

子供ながらの勘の鋭さというものが司にはあった。


「あれ?君はどうしてそんなところにいるの?」


今思えばこれが運命の出会いと呼ぶものだったのだろう。


大きな岩で隠れるようにしている少女がそこにはいた。

本を抱え、今にも泣きだしそうな顔をしていた。


「——―――――!」

(何言ってるんだろうこの子?)


その少女は発した言葉を幼かった司も、これを思い出す大きくなった司も、

知ることは永遠にない。


「ごめんね…僕には君がなんて言ってるのかわかんないや…」

司が言ってる言葉も向こうには伝わっていないだろう。

幼いながらも精一杯考えた司はとりあえず頭を下げることにした。


「——―――――!」

少女は驚いて目を見開いていた。

相変わらず司は少女が言っていることが分からなかったが、少女を落ち着かせるために、司は優しく微笑む。


その表情を見た少女はぎこちない言葉で必死に紡いだ。

「ま、ましろ」


太陽の光をも反射させる綺麗な銀髪の少女は司にそういった。

きっとこれがこの少女の名前なのだろう。

そう思った司は自分の名前を日本語で伝える。


「つ、か、さ。つかさ」


少女に分かりやすく自分の名前を伝えた司は安堵の表情を浮かべる。

少女がにこやかに笑っていたからだ。

(なんとか分かってくれたみたいだよ…よかった…)


少女は自分の手に持っていた本を司に見せる。

その本の表紙に書いてある言葉を司は理解することができなかったが、

少女がとても大事にしているのがよくわかった。かなり古い本だろう。ところどころ紙が黄ばんでいた。しかしその本には特に目立った傷が見当たらなかった。

(贈り物ではなさそうだけど…あ!家にあった本なのかな?)


司は声を出さずに本に指を指し首をかしげてみせる。

本について知りたいというニュアンスだったが少女には本を見せてという風に伝わったのだろう。


少女は誰の目にもわかるくらいに喜び、本を捲った。

立ったままではあまり好ましくなかったのだろう。

少女は大きな岩に背を預け本を捲る。


少女は声には出さなかったが司にも座ってほしいのが表情で伝わったので司も少女と同じように岩に背を預けて座り込んだ。


微妙に日陰にはならなかった。が、そのお蔭か太陽の光が少女の銀の髪を反射させる。


(ほんとにきれいな女の子だな…)

幼い少年の目には煌めく銀髪の少女が魅力的に見えた。

本を一生懸命に捲る少女の様子など見向きもせずに、ただ少女の横顔を見ていた。

少女は司の事など忘れてしまったのだろうか。きっとそんなことはないのだろうが、そう思わせるほどに少女は本に夢中になっていた。


彼女のサファイアのような碧眼は本だけを映し出していた。

司は幼いながらもすこし妬いてしまう。


少女が読んでいた本よりも司が見てもらえるように、少女のサファイアのような碧眼で司だけを見てくれるように、司は身を乗り出す。


少女の体と司の体が近づく。

距離は5㎝にも満たない。

息と息がお互いの頬を触れ合う。


「——―――――!」

少女は大きな声を出して立ち上がった。

司は驚いて少女の人形のようなきれいな顔を見る。

彼女の頬は真っ赤に染まっていた。


しばらくの間二人は顔を見合わせる。

そよ風が彼女の銀髪を揺らがせた。

まるでその少女の様子は人ではない儚くとも美しい生き物のようで―



やはりその少女はきれいだった。




始まりました新しい物語!

これからどうなっていくのか…

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