旅立ち
阿紋
1
「どうしたの、夏来」
「これから家に来ない」
「だって今日は…」
「そうだよね」
「一人じゃないものね」
テーブルに並べられた料理。真ん中に置かれたクリスマスケーキ。夏来は部屋の隅で膝を抱えて春子に電話している。
「どうしたの」
「あたし行くよ、今から」
「いいの」
今日はあたしの家でって言ったのはあいつじゃない。夏来はじっと玄関を見つめていた。
「ごめん、今日は行けなくなった」
まだ耳の奥に残っている声。あいつの声。
「夏来居るのか」
ドアをたたく音。誰が来たのかすぐ分かった。絶対会いたくない。
「開けてくれよ」
「ダメ、帰って」
「あのさ、あいつ急に」
「なんで、あんたなんかに」
「しかたないだろう。友達なんだから」
「やっぱり、俺じゃダメなのか」
「わかってるくせに」
「ねえ、あの人はどこに行ったの」
「ちょっと、遠くにさ」
「本当に」
「しかたないんだよ」
ドアの向こうが静かになる。夏来は恐る恐るドアを開けた。
封筒が落ちている。
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