第6話 一尾
「やばい!やばい!やばい!やばい!」
レイは焦っていた。ブラッククロウ一撃で屠るような魔物がどんどんと自分のいる洞窟へとゆっくり進んでくるからだ。
一尾は左足を怪我しているため足取りは遅いが着実に近づいてきている。
レイのいる洞窟はコの字型で逃げ場はない。結界魔法は攻撃か防御どちらかにしか使用できずどちらにしても耐久面で心もとない。絶体絶命だと思っていたその時一尾が急に足を止めた。
止めたのはホーンラビットの血を埋めたすぐ手前。一尾はケガをしていない右の足で地面を掘り始めた。そして、掘り返した先に何もないことが分かると洞窟により接近し始め結界へとぶつかった。
「コン?」
一尾は結界を右足でひっかくと何か壁があることが分かったのか右往左往し始めた。
その時レイは、洞窟の奥で膝を抱えてビクビクしていた。
そして、ついにその瞬間は訪れた。洞窟の横幅は2mに対してレイが貼っていた結界は1.7mどうしてもそこには隙間ができてしまう。その隙間から覗き込んだ一尾とレイは目を合わせてしまった。レイの身体は硬直してしまい動けない。
がしかし、一尾の目線がレイから外れ横に置いてある籠をガン見している。
レイは籠からものを取り出し並べてみる。
籠の中身は「消毒ポーション」、「ホーンラビットの肉」、「ブラットベリー」「よもぐ」だ。
一尾はホーンラビットの肉を凝視している。ときどきこちらを見ては手をちょいちょいと動かしていた。どうやら洞窟によって来たのはホーンラビットの血の匂いにひきつけられてきたらしい。そこで近場にある肉の匂いを嗅ぎつけて結界の中を発見したようだ。
レイはホーンラビットの肉を結界の隙間から覗いている一尾の鼻先へと置いてやった。
すると一尾は肉を口にくわえ洞穴の目の前で食べ始めた。そして、食べ終わる頃になって一尾はじっとこちらを見つめている。目を合わせると、次は消毒ポーションに目を向ける。
どうやら喉が渇いたのでポーションを寄こせと言っているようだ。
器がなかったので籠を作るためにとってきていた竹を半分に割りそこに消毒ポーション(よもぐ入り)を注いで渡してやる。すると、間も置かずに一尾はポーションを飲み始めた。どんどん飲み尽くしていくので消毒ポーションを3本注ぎ、洞穴の隅で丸くなっていると一尾も洞穴の前で丸くなり始めた。
「まじか」
レイのこの一言が響いて聞こえるほど、騒がしかったはずの森は静かになっていた。
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