小物置き場

影夏

とある主従の会話


「なあ。オレが死んだら、お前はどうする?」

「別に。どうもしませんよ」

「えー? 薄情なヤツだな

 仇を討ちに行くってほどじゃなくてもさ、せめて泣いてくれたりはしないのか?」

「しませんよ、というよりは、『できませんよ』が正しいですかね

 死んでしまっていては、涙の流しようもありませんから」

「――は?」

「何をそんなに驚いているんです? 私は生き恥をさらすつもりはありませんよ」

「いや、恥って……人間の生き死になんて、所詮、時の運だろ?」

「おや? そもそも『運も実力の内』は、貴方の口癖ではありませんでしたか?」

「それは失敗した時に使う言葉じゃねーよ!」



「まあ、そういうわけですから、

 今後は『従者をかばう』なんて無駄なこと、二度としないでくださいね」

「いやいや、今回はお前に反撃してもらわなきゃジリ貧だったし、

 オレが壁役は妥当だったろ?」

「ええ、貴方がそういう計算の上で私をかばったのであれば何も言いませんよ

 ……きちんと計算していたのなら、ね」

「うっ」

「まったく。貴方が私をかばったところで死体が1つ増えるだけだと、

 いい加減に理解してほしいのですけれど」

「まあ、そんときは黄泉地の旅が寂しくなくて良いだろってことで!」

「それは諦めどころが違うでしょう!?」

「あっはっは。だって、無理だし」

「無理って、貴方ね……」

「ま、お前とオレは一蓮托生だからな、諦めろ」

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