第28話 心配無用?
――パンッ!
『レベルが192に上がりました。ステータスポイントを10獲得しました』
触手を破壊して調子良く上がっていたレベルだったが170を越えてからはなかなか上昇せず、それでもヒューマンスライムが数えきれない程の触手を出してくれていたお陰で俺は190レベルに。
その上で本体を倒して今度は2レベルアップ。
触手のボーナス経験値といい、ヒューマンスライムを倒した時の経験値といい、癖のあるモンスターではあったが、終わってみれば経験値稼ぎには最高だったと思える。
「倒、したのよね? 飯村君が1人で……」
「朱音がスキルを使ってくれたから勝てたと思う。あれがなかったら多分俺は――」
「おいおいおい、なんだよ今の黒い閃光に赤いエフェクトは? 本当に飯村でいいんだよな?」
「それより先に言うことがあるでしょ! ……あの助けてくれてありがとう、飯村」
さっきまで協力してくれていた朱音はどこへやら。
信じられないといった表情で朱音が話しかけてくると、避難していた淳と彩佳が合流。
2人共急に優しくなってちょっとだけだが……気持ち悪いな。
それにしても、さっきまで動く事も難しそうだったのに2人共よく走ってこれたな。
「……これって多分」
『はい。私がリジェネを掛けておいたのでそこそこに動ける様になりました。ただお二方ともHPが高かったので全回復はしていません。これ以降の探索は中止して一旦身体を休めた方がいいと思います』
「やっぱりか。そんなに魔力を使って大丈夫なのか?」
『リジェネはそんなにです。どちらかといえばこの会話の方が魔力は使いますね』
「……はぁ。緊急時以外はなるべく話すのを我慢してくれ」
『すみません。話せるのがつい楽しくて……。本当は他の方とも……いえ、これ以上控えておきます』
「そうしてくれ」
「えっと、そのずっと気になってたんだけど飯村君は誰と話してるの?」
クロとの会話が途切れると朱音が困り顔で話しかけてきた。
そっか、他からすれば俺が1人で話している様に見えるんだよな。……こんなに恥ずかしい思いをしたのはいつ以来だろう?
「これはこのダンジョンがフェーズ2に入った事である存在を復活させる必要がでて、それが――」
『ダンジョン1~10階層までを統括するモンスターを討伐しました。1~10階層までのモンスターは全て正常な状態で出現するようになりました。11~20階層のモンスターを統括するモンスターが出現中。探索している人間現在1人。HPはフル。10階層の階段を利用可能にしました』
俺が言い訳っぽく言葉を並べているといつものアナウンスが流れた。
少し焦っていたから無理矢理間をとってくれたのは有難い。
「今のは私にも聞こえたわ。1~10階層まではこれで正常になった、けど……これと同じ様な事を繰り返さないともっと深い階層には行けないみたいね。それにしてもいつの間に階段が閉鎖されたのかしら?」
「ダンジョンから逃げてこられた奴らは昨日の夜前までにほぼ全員窓口に報告済み。閉鎖されたのは夕方くらいじゃないか? とにもかくにも、今の情報を聞くに次の階層で捕まってるのが1人いるな」
朱音の質問に答えながら淳は額に皺を寄せた。
きっと取り残された人の事を考えているのだろうけど、これについては俺は全く心配していない。
だってその1人って多分……
「この状況でHPが削れていない探索者なんて拓海くらいなもんだろ。心配しないでもあいつなら勝手に帰ってくるんじゃないか?」
「拓海……。そうね。拓海なら問題ないわ。一旦帰って治療を急ぎましょ――」
「――うっ! うっぐ……」
拓海の名前を出して全員を安心させたまでは良かったが、急に身体に異変が……
頭が痛い。熱い。これは一体……
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