第13話 金色の管
小魔石5000……。一部っていうのが何割くらいなのか気になる。
それに吸収の際、拾得済みの魔石も対象とされてしまうか、どうかも気になる。
現在様子を見てダンジョンに侵入しない探索者達が、ダンジョンの状態が良い方向に変化して戻って来れた場合でも、魔石の総拾得量は暫くそれによって左右される。
今の内に一気に小魔石10000個分を集めてそんな縛りを取っ払いたいが、それは流石に無理。
後で江崎さんに頼んで動ける探索者全員に、早急に魔石集めをして欲しいという旨の依頼を出して貰えるか相談してみよう。
「――ぺぽっ!」
「そんでお前らは全員そっちなのか」
金色スライムの大群はこの広間にある別道から右の道を選び駆けていく。
一方通行の狭い道でよく全員が同じ道を進むな、と思いながらも俺は弓を構えてるのと同じ道を選び進む。
万が一ここに他のモンスターがいても、金色スライム達がいればそのモンスターとの距離感を測れたり、強さを確認出来る。それは底辺探索者にとって1番大事なリスク回避に繋がるのだ。
「安全に確実に――。くっ! なんだこれ!?」
――ずおおおおぉぉぉ
一歩一歩慎重に進んでいると、掃除機に似た音と共に強烈な吸い込みによる突風が襲った。
前を行く金色スライム達は突風に耐え兼ねて宙を舞い、次々とこの先にいる何かに吸い込まれる。
相手と距離が開いている事と、その何かがあまり大きいサイズではない事で俺の場所から視認するのは困難。
状況把握の為に進むのは俺まで吸い込まれる恐れがある。だからといって後退出来る程の吸い込み力ではない。
「射つ、か」
俺は踏ん張りながらなんとか矢を装填、目一杯の力で弓を引く。
しかし矢は吸い込まれていく金色スライムに当たってしまう。
「勿体ないけど……」
俺は間髪入れずに2射3射と回数を重ね金色スライムを減らしながらレベルを上げる。
今は何よりもこの吸引を止めるのが最優先だからここの矢の消費は仕方ない。
「見えた! ってあれさっきの管?」
邪魔な金色スライムが俺の射撃と吸引であらかた消えると吸引をしていたその何か、さっきも見た金色の管が見えた。
金色スライムを飲み込みやすい様に大きく開いていた口が、だんだんと小さくなっているのは逃げる前兆なのだろう。
「逃がすかっ!」
遂に吸引が途絶えた。
管はどこに繋がっているのか分からないがその先に移動を開始する。
俺はそんな管を撃ち抜く為に急いで矢を装填する。
だが
「ぐかあああああああああああっ!!」
管の正面の土が盛り上がり、今まで姿を見せていなかったコボルトが顔を出した。
もしかすると金色スライムの数が減って出現するモンスターのバランスが正常に戻ったのかもしれない。
「でも今じゃなくてもいい――」
コボルトが姿を現した事に気付いた管は、逃走を止めてコボルトの元に。
殺されるかもしれないっていうリスクを背負ってまで何をする気だ。
「……」
「う、ぐおお……」
管はコボルトの口の中に入り込みうねった。
するとコボルトは苦しいのかその状態で嗚咽を漏らし、涎を溢す。
「ただモンスター同士の抗争……っていうわけじゃないか」
コボルトの身体がボコボコと変化する。
巨体が印象的なその姿はコボルトの中でも20階層のボスを務める『ウォーコボルト』で間違いない。
7階層で『ボーパルバニー』が現れたのもこの管が原因だったってわけか。
「「ぐがあ!」」
情報を手に入れる為にその行動を眺めていると、追加でコボルトが2匹姿を現した。
管は『ウォーコボルト』を産み出した疲れがあるのかよろけつつもそのコボルト達の横に極小の金色スライムを2匹吐き出した。
金色スライムはよたよたとコボルト達の身体を上り口の中へ。
「これが『金色の角のアルミラージ』の作り方か」
コボルト達が持つデカい2本の犬歯が金色に。
金色スライムの増殖は時間が掛かるが高いフロアの支配力と、高性能な壁役を産み出せる。
反して他モンスターの強化とそのサポートをする部分金色のモンスターを産み出すのは速効性こそ高いが、産み出せる数が少なく、多大な疲れを伴う。
結局これをする目的は分からないが、状況に応じて産み出すモンスターを変えたりするところを見ると、あの管の知能が高い事が分かる。
こんな考察をしている間にも、必死に全力で逃げているし……。
もっと厄介な事をしでかす前に優先して管を殺さないといけない事がよーく理解出来た。
「だからお前らはさっさとくたばれ」
巨体の癖に俊敏な『ウォーコボルト』は前進、金色犬歯のコボルトはバックステップ。
ライフ3のボス対人間の構図を作られた。
「いや、あの産み出され方って事はこいつはボスじゃないか。あの『ボーパルバニー』も。そうなると通常のボスはそのままなのか、それとも……」
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