乙女ゲーム悪役令嬢の投資術~シナリオの通りなんて生きてあげません。婚約破棄された私は今日も人間の株を売り買いする。尻馬に乗って食べるご飯はおいしい~
喰寝丸太
第1章 パン屋編
第1話 乙女ゲーム転生
「今までのトゥレアへの狼藉、見るに堪えん。ラメレイ・パキポディ、ただいまを持って婚約を破棄する」
私はショックで目の前が真っ暗になった。
そして我を取り戻して周りをみると、ドレスやタキシードで着飾った十代後半の男女達。
部屋は赤い絨毯で敷き詰められ、楽団が音楽を奏でている。
社交ダンスを踊るカップルもちらほら。
あれっ、私は誰?
日本生まれの東京育ち。
頭が割れるように痛い。
うがががっ。
私はのたうち回った。
「だだをこねているのか。見苦しい。そんな事をしても無駄だ」
頭痛が治まって、記憶が統合されたのが分かった。
目の前にいるのはハオルチア王子。
この国の第二王子。
王太子でもある。
金髪で涼し気な目つき。
アンバーな瞳。
甘いマスクでハンサムだわ。
どこかで見た気が。
ええと、私はラメレイ。
日本で暮らしていた時の名前は%$#&駄目ね、思い出せない。
まあいいでしょ。
別の事を思い出したわ。
ラメレイ・パキポディは、黒薔薇の呪縛というゲームの悪役令嬢よ。
攻略キャラの一人が目の前にいるハオルチア王子。
ハンサムなはずだわ。
メイン攻略キャラだもの。
よりによって乙女ゲームの悪役令嬢転生。
神様は相当ひねくれているに違いないわね。
黒薔薇の呪縛を簡単に説明すると。
婚約破棄のショックで、悪役令嬢が邪魔法に目覚めて、攻略キャラ全員を虜にするところからゲームスタート。
その邪魔法の余波でヒロインが聖魔力に目覚める。
そして聖魔法を獲得するの。
と言っても聖魔法をヒロインが獲得するのは物語の終盤。
ヒロインは数々のイベントで、知らず知らずに聖魔力を発揮して、攻略キャラを邪魔法から解き放っていくのよ。
そして、好感度を稼ぐわ。
解放度がイコール好感度なのよね。
戦闘の基本はRPG。
戦略性みたいな物はあるけど、売りになるほど凝ってない。
乙女ゲームですし。
このゲームの肝はなんと言っても最終戦闘。
一定の好感度に達していない攻略キャラは敵に回るの。
だから、好感度を平均的に上げていくのは、難易度が高い。
5人いる攻略キャラうちの3人に絞って上げていくのが簡単な攻略法。
そして、一番好感度の高いキャラと結ばれる。
仲間が最終戦闘で裏切るのは不評だったみたいで、このゲームは糞ゲーとして名高い。
開発陣は何を考えたのでしょうか。
たぶん、インパクトだけを考えたのでしょうね。
スタートからしてインパクト狙いだわ。
入学でなくて、王子の卒業パーティでもって、婚約破棄。
糞ゲーなのは、育てたキャラのうちの半数が死んだら、パッピーエンドになっても、もやもやするのが理由よ。
私もこのゲームは数回プレイして速攻で売ったわ。
普通の感覚なら、そうなるわよね。
問題は、バッドエンドだと、悪役令嬢は邪神になる。
ハッピーエンドだと、処刑されて終わるのよね。
どっちもお断りだわ。
婚約破棄されたって事は、ゲームのスタート地点だから。
「ステータス」
――――――――――――――――――
名前:ラメレイ・パキポディ LV1
魔力:3/3
スキル:株
――――――――――――――――――
解放度の表示は出ないのね。
ヒロインじゃないからかしら。
あれっ、悪役令嬢の邪魔法はどこに行った。
代わりに株なんてスキルがあるのですけど。
それと、魔力がほとんどないんですけど。
ラメレイはラスボスだから、それに相応しい魔力があった。
確か初期値で1万を超えてたはず。
意識の主導権が私になったから3になったのかしら。
無い物は仕方ないわ。
それより気になっているスキルよ。
株、発動。
――――――――――――――――――――――――――
名前 レベル 現在値 安値 高値
ラメレイ LV1 87A 87A 16,287A
――――――――――――――――――――――――――
ええっ、私の価値が大暴落しているんですけど。
株って人間の株式の事だったのね。
値段は何で決まるのかしら、人気。
それとも総合力。
「おほほほっ」
私は高笑いした。
なぜなら、底値だからよ。
底値なら買いでしょ。
上がるしかないんだから。
「ラメレイ、遂に発狂したか」
そうよ、倒産するって事は私が死ぬって事よね。
絶対に倒産はしない。
見事に再建してみせるわ。
再建策なら、沢山ある。
「勝てるわ。勝てる。大儲けよ。では、ごめんあそばせ、ごきげんよう」
つかつかと大股で立ち去る私。
あっけにとられる群衆。
ヒールが高いので転びそうになった。
靴を脱ぐと床にヒールを打ち付けて踵を取る。
ざわめきが大きくなった。
これで歩き易くなったわ。
生まれ変わったラメレイとしての人生は、ここから始まるのよ。
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