第51話 天界の幹部
「アズ……どうして」
「ああ、神よ。アンタはここで死ぬべき存在ではありません。天界にはアンタが必要なのです」
「待て……おい、アズ……? アズゥゥゥ!!」
アズは最後にそれだけ言って力尽きたようだ。神の手刀を受け気絶していたはずだが、神を助けるために執念でここまでやってきたのだろう。
さして思い入れのない我らだが、仕えるものへの忠誠心は眼を見張るものがあった。どうか安らかに眠って欲しいものだ。
「邪魔が入ったな。だが状況は変わらん。結局神が動けない以上、私の勝利は揺るがないのだからな」
「ぐっ……体さえ動けば……」
依然ピンチであることに変わりはない。ディアウスの全力の一撃を耐えられるのはパワードスーツを着たアリサでも不可能であるため、もはや神の命は無いに等しい。
再度ディアウスは腕を振り上げ、神を貫こうとする。今度こそ終わり。この場の皆がそう思った。
しかしまたしても、ディアウスの爪が神を貫くことは無かった。
「すまない、遅れてしまった」
「ゼロ!?」
神がゼロと呼んだ巨漢は血を流しながらも素手でディアウスの爪を受け止めている。
「おっと、俺たちもいるぜ」
「嫌な予感がしたから急いで来たけれど、間一髪だったわね」
「神様、あまり無茶はしちゃ駄目。危うく世界が滅ぶところだった」
「ルディ……。それにシエルにハクまで……生きていたんだな!!」
「私たちが死ぬわけない」
「その通りだぜ。見くびってもらっちゃ困る」
突然現れた謎の四人。
ルディと呼ばれた男性はゼロと同じくらいの長身ではあるが体格が細身だ。かと言って頼りないといった雰囲気は無い。
シエルと呼ばれていたのは赤髪のロングが目立つ女性。表情や立ち振舞も合わさって自信家といった印象が強く伝わってくる。感じる魔力も相当なものであり、態度だけでは無く本当に実力のある者なのだろう。
ハクと呼ばれたミステリアスな印象を受ける少女は、晴天のような澄んだ青色なショートヘアを揺らしながらゆらゆらと動いている。先程神が死ぬと世界が滅ぶと言っていたのはどういうことなのだろうか。……今考えても仕方のない事だ。
そして最後に、ディアウスの爪による攻撃を軽傷で受け止めたゼロ。紛れもなく実力者だろう。
「其方らは……天界四天王だな? 私に負けて逃げていったかと思えば、今更何をしに来たのだ」
「確かにあんときは逃げたけどな。それは立て直すための戦術的撤退だ。今度こそてめえを倒してやるから覚悟しな」
「随分大きく出たものだ。ではかかって来るがいい」
「言われなくても……な!」
ルディはあの細身から出るとは思えない声量でディアウスと言葉を交わした後、地を蹴りディアウスへと向かっていく。
「ルディ、しばらく頼む。私は神様を移動させる」
「任されたぜ」
ゼロはルディと入れ替わりになる形で、動けなくなった神を抱えながらディアウスから距離を取る。
「はぁ……助かったよ」
「全く……。はい、魔力ポーション。全快はしないだろうけど無いよりはマシ」
「ありがとう」
ハクから受け取ったポーションを飲んだことで体力と魔力が少し戻ったようで神はその場に立ち上がる。
神が一旦落ち着いた今、この者たちについて聞かなければならないことがたくさんある。
「神よ、この者たちは何者なのだ? ディアウスは天界四天王と呼んでいたが」
「そのまま、天界の四天王だよ」
「ではディアウスが従えていた新生魔王軍の四天王は……」
「天界の四天王では無い幹部たちだね。力のある者たちはディアウスと戦って散ってしまったのだろう。最初から戦うことを選ぶことすら出来なかった者たち……と言うと嫌味になってしまうかもしれないけど、意味合い的にはそうなる」
確かに新生魔王軍の四天王としては彼らは力不足だったのだろう。もっと力のある者だったならばこれほど早く突破は出来ていないはずだ。
とはいえ結果的に多くの時間をかけずにディアウスまでたどり着けたため悪いことではない。
「なら、その四天王であるアンタらが来たんなら百人力だな」
「期待されるのは悪い気分ではないが、私達も一度負けている身なのでね」
「そうね。私達が本気を出してもディアウスには敵わなかったわ」
「ディアウスは本当に強い。でも、だからといって負けたままでいるわけにはいかない」
「ふぅ……一段落付いたか? そろそろこっちにも援護が欲しいぜ」
ディアウスと戦っていたルディがこちらに戻り、そう言った。息が荒くなっているものの目立った外傷は無く、まだまだ戦う気のようだ。
であれば我々も加勢するべきだろう。戦力が増えたこのタイミングで一気に攻めるのだ。
「よし、僕もだいぶ回復してきた。もう戦えるよ」
「くれぐれも無茶はしてくれるなよ」
「放って置くとすぐ死にかけるの良くない」
「……前処するよ」
神は天界四天王から信頼されているのかいないのかわからない。ただ、確かな関係性は感じた。神を庇い散っていったアズもそうだが、部下の忠誠心は本物なのだろう。
「さて、ここから巻き返していこうか!」
神の掛け声を合図に、ディアウスとの戦いが再度始まった。
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