第38話 最強の助っ人ということか
「……ん?」
「起きたようじゃの」
目が覚めた時、我は海神に膝枕をされていた。
まだ頭にふわふわとした感覚が残っており、うまく思考がまとまらない。
「わらわは満足じゃ。約束通り、其方らとともに戦ってやろうぞ」
「そうか。それは助かる……」
心地の良い眠気が頭の中に靄をかけているようだ。
起き上がろうとしても力が入らない。
もう少しこのままで良いかと思ってしまう。
「また眠ってしまったか。それではもう少し楽しませてもらうとするかの」
次に目が覚めた時、体に妙な火照りがあったがその詳細をは怖くて聞き出せなかった。
知らない方がいいこともあるのだろう。
下着を動かされた痕跡があったのは見ないことにしよう。
「……すごかった」
「だろ?」
アリサは我が海神の部屋に言っている間に正常に戻ったようで、いつも通りのアリサだった。
しばらくあの状態のアリサのままでも良かったのだが。
「さて、満足いくまで楽しませてもらったことじゃ。これからについての話をしようではないか」
「なんだかんだ言って最初から助けてくれる気だったんだろ?」
「貴様だけであったならどうかはわからないが、こんなに可愛い者たちが助けを求めるのであれば放ってはおけないからの。それに天界への八つ当たりをする良い機会じゃ」
悪い笑みを浮かべる海神。
追放されたのがまず間違いなく自らの素行が原因であることを理解しているのか、八つ当たりであることを自覚している。
それはそれでたちが悪いとは思うが。
『神よ、聞こえているか』
「ディアウス……!」
突然城内に響き渡るディアウスの声。以前と同じように遠隔で何かを伝えようと言うのか。
しかしこのタイミングでの事となると、向こうは我らの動向を把握しておるのか?
『其方は今、どこにいるのだ?』
「……え?」
『其方の行動を把握しようと探知魔法を使ってみたものの、現在地が海底なのだが? さては何か小細工をしておるな!』
想定外のことを言い始めるディアウス。
どうやら彼女はこちらの行動を把握しきれている訳では無いらしい。
それに以前もそうであったが、恐らく彼女の声は一方通行でこちらから応答することは出来ないのだろう。
あまりにも不便すぎる。
「アイツ、こっちから通信しなかったら何もわからないの前提で話してるみたいだな。まあいい。それならそれで好都合だから利用させてもらうとするか」
『聞いているのか神!』
「ああ聞いている。残念だが妨害魔法によって俺の正確な居場所はわからなくなっているから諦めるんだ」
『なんだと!? おのれ神め!』
ディアウスに嘘を伝えた神だが、明らかに笑いをこらえている様子からしてかなり楽しんでいそうだ。
信じ込んでいるディアウスも相まって、周りから見ている分にはふざけているようにしか思えない。
だがきっとディアウスは本気なのだろう。あれだけ圧倒的な強さを誇っていたのに、突如として残念感が際立ち始める。
『まあいい。居場所がわからなくとも、しょせん私の敵では無いからな。せいぜい足掻くのだぞ! はっはっは!』
「アイツ、あんなに残念な魔王だったのか。そしてそれに呆気なく陥落させられた天界とは……」
「まあいいじゃないか。なんか勝てそうな気がしてきたぜ」
アリサの言う通り、以前のような圧倒的な恐怖の対象というイメージは払拭された。
依然として力の差が開いていることに変わりは無いのだが。
しかし彼女は海底にこのような城があることは知らなかった。
ということは海神についても知らないと言うことか?
「ヤツはここについて知らないようであった。それは、海神を認知していないという認識で良いか?」
「それで良いだろうね。ディアウスのヤツが生まれたのは海神が追放された後だから」
「つまりわらわは新魔王とやらに認知されていない……言わば秘密兵器という訳じゃな。うむ、燃えてきたぞ。声を聞く感じきっと可愛いじゃろうしな」
存在を認知されていないというのはつまるところ対策されていないと言うことになるため、かなりこちらに有利となる。
ただ海神がディアウスにすらそう言った目を向けているのが不安でしかないが。
「新魔王……まあ見た目は悪くなかったぜ。ディアベルのが断然可愛いけどな」
「アリサよ……」
「まさか其方らそういう関係じゃったのか!? それは良すぎる! 水生魔物の交尾を見るのには飽き飽きしていたのじゃ。もっと濃密な恋愛を見せるのじゃぁぁ!」
我とアリサの関係性を理解した海神は今までで一番のテンションで跳ね上がる。
普段から水生魔物の交尾を見ているのはどうかと思うがきっと他に娯楽が無いのであろう。
……いや、交尾を見るのは娯楽なのか?
「戦力が増えて何よりだ。……だがそれでもまだ足りないな」
「海神の力を持ってしても足りないのか?」
「わらわ、自慢じゃないがかなり強いのは自負しておるぞ?」
「ディアウスだけなら大丈夫かもしれない。だけど天界には他にも幹部級がいるからね」
「それなら心配はいらぬ」
背後から聞き覚えのある声が聞こえる。
そこにはここにいるはずのない男、ノカワンタ国王が立っていた。
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