第16話 魔導義手
「やっと完成したか」
ついに魔導義手が完成した。魔導義手とは魔術を利用した義手であり、腕を失くした者の補助を行うために開発されたものだ。元々は作業用の大型の工事用装置だったが、腕に付けて使えるように小型改良を施したものが徐々に進化していき、魔導義手となっていった。
「うむ。サイズもぴったりだな」
「これで私が世話するのも終わりか。少し寂しくなるな」
「……別にけがをして無くとも、あーんくらいはしてやるぞ」
「言ったな? 取り消しは出来ないからな」
我自身、アリサとの濃密な時間が減ってしまうことに少しがっかりしておるのだ。
「それでは魔導義手の力を確かめてみましょうか」
「ん? 確かめるって何をだ?」
「色々と機能を積んであるのです」
ライザはややドヤ顔でそう説明してきた。我は普通に動くものであればそれで良かったのだが……。
◇
「それではまずフレアバスターを」
「フレアバスター!?」
なにその技名!?
「フレアバスターは魔導義手内に仕込んだ火属性魔法を濃縮して放つ強力な攻撃手段です」
「淡々と説明されても困るな……」
我はライザの説明を受けながら実際に撃ってみることにした。
「よし、ここを……うおぉぉわぁぁぁあっ!?」
魔導義手の手のひらの中心部分から強力な熱線が放たれる。それは的を貫通し、その奥にあった岩山をも蒸発させる。
「あ、あぶなすぎる!?」
「流石に威力です。サダツグさんの計算は間違っていませんでしたね」
「なんてもん積んどるのだ!?」
「お気に召しませんか?」
「お気に召すというか、こんなもの積んでくれとは頼んでいないぞ!?」
我はただ魔導義手を作ってくれとしか頼んでいない。こんな国が滅びそうな兵器を積んでくれなんて一言も言っていないのだ。
「それはそうですが魔王様の安全のため、高い戦闘力を誇る最高の義手を完成させました」
「最高というか最凶……」
「まだまだありますから、次いきますよ」
ここから、怒涛の機能紹介が始まった。
「お次は魔導チャフですね。魔力を拡散する札を散布し、追尾魔法や探知魔法から身を守ることが出来ます」
発動すると札が大量に散布された。同時に外側から追尾魔法が撃ち込まれるが、全て明後日の方向へと飛んで行った。
「次は魔力錬成。魔力を生み出し装着者に還元します」
発動後しばらくすると、義手からものすごい量の魔力が供給され始めた。
「えーと、アイスレーザーはですね……光線を放ち接触した対象を凍らせます」
ライザの説明通り発動したのだが、それはレーザーというにはあまりにも野蛮なぶっといミサイルだった。
「ちょっと待てこれ本当にレーザーか?」
「すみません、別の発動方法を間違えて伝えてしまいました。……それはヒールミサイルですね。着弾時に辺り一帯に回復魔法を発動します」
「ライザ……もしかして寝てないな?」
ライザがこのような初歩的なミスをするとは思えない。
「クマが出来ているな。すまない、我が無理を押し付けてしまったばかりに」
化粧でごまかされてはいるが、よく見ると目の下にはクマがあった。恐らくしばらくまともに寝ていないのであろう。
「いえ、これも魔王様のためですから」
「いやというかもしかしてこの機能たち、深夜テンションで付けてないよね……?」
「……」
ライザの表情が曇る。今までこちらを見つめ目を離そうともしなかったのに、急に目を反らした。
「気を失い……気づいたらこの機能が盛り込まれていました。申し訳ございません深夜テンションで付けました」
「あぁ……まあ良い。ただでさえ忙しいところに義手制作まで頼んだのだから、それくらいは問題ないさ。ただ、危ない機能は外そうか」
結局、魔導チャフと魔力錬成以外の機能は取り外すことにした。この二つは危険性が低く汎用性も高そうなので実装したままだ。しばらくの間世話になる義手だから、せっかくならこれらの能力を使ってやりたいところではあるな。
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