10 Youは何の罪でここにいる?
「歩けるかい? 僕たちの集落に案内するよ」
二人に手を引かれながら、二人にこんなことを聞かれた。
「君、もう名前があるんだね。ディストピランド民には珍しいタイプだ」
人民に番号はあっても名前はない。名前が与えられるのは、
「一緒にいた女の子につけてもらったんです」
だから、僕は正直に答えた。すると、二人はさらに目を丸くした。
「女の子が一緒にいたの。どうして?」
ディストピランドは完全孤独の
「僕の名前はハルちゃんにつけてもらったんです」
「そっか、好きなの?」
「二人が結婚したら完璧になろうって…」
「きゃー!」
なぜか美香さんのテンションが上がる。しかし、八尋は首を傾げながらボソッとつぶやく。
「でも、ハルって子は早く探したほうがよさそうですね」
「どういう意味ですか?」
「その子、シジノードのところに行ったら…」
「今は、黙っときましょう」
意味深な言葉を残す二人。その後二人は無言で歩き続ける。そして、ある扉の前で立ち止まる。
「着いた。ここが僕たちの集落だよ」
扉を開くと、八尋はいろいろ説明してくれる。このディストピランドはテーマパークだったこと。その中にショッピングモールがあって、今の彼らは閉鎖された旧ショッピングモールで生活しているのだという。
「広い場所ですね」
「集落の中では小さいほうだけどね」
八尋は町の雑貨屋さんや、食品屋さんを紹介してくれる。みんな普通に名前があって、何年くらい生きていて、それに、結婚している人もいた。みんな、仕事をしているけれどここの人たちはディストピランドほどきっちり仕事しているわけではなさそうだった。道具を修理する鍛冶屋さんなんて、僕たちが近づいてもぐっすり眠っていたし。
そして、みんな自己紹介がてらこんなことを言う。
「俺は『シジノードのあほ野郎』って言ったから罪が二つ付いたな。一つは
「もう一つは?」
「
「はははは!」
それに、八尋はとてもいろんな人の罪やこのディストピランドのことを知っている。みんなからも物知りだって言われて褒められていた。
「救護士のエリカさんはね、国家反逆罪だってさ。なんでだと思う?」
「うーん。わからない」
「幸せかってシジノードに聞かれて『別に』って答えたからなんだって」
ここのみんなは背負わされた罪をなんとも思っていないようだった。受けた罪を認めない。だからこそここで専制国家の
「ところで、レイの罪は何なんだい?」
「僕の罪は、
「はははは。それも面白い罪だね!」
僕はなんだか、気分が楽になった。罪人でも受け入れてくれるこの場所がとっても暖かく感じた。
「ところで、美香の罪は聞いたか? ディストピランド史上最悪の犯罪者だからな」
「そうなんですか?」
「あぁ、普通ディストピポイントなんて懲役20年もつけばすごいじゃん?」
僕は初犯なのであまり知らないが、どうやら20年の懲役に処されることはなかなかないらしい。
「美香はね…。ディストピポイントでいうと懲役600年相当の罪だったんだ!」
僕は素直に驚いた。さらに詳しく聞くと初犯で600年。一体、美香さん何をしたというのか…。
「君たち、一通り挨拶は終わったかい?」
そんな話の最中に美香さんに声をかけられた。僕は自然と背筋がピンと伸びるのであった。この人やべー人なんだって、本能で感じ取ってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます