糸の詩

l'archet

初恋

つもる愛しさ小瓶につめて

戸棚の奥にしまい込み

いつぞ開けると知らぬものでも

伽藍の堂より鰯の頭


いつか誰かを愛せども

内に秘めたる想いは止まず

いとしい人よまた逢う日まで

ただ羽目板の軋むのみ


ただ過ぎる日にうらぶれば

鰯の頭はすでになく

御堂のうちにか細く鳴くは

いつか聞いた蝉の声


今やこの身を責め立てる

愛しあの日の匂いの中に

くだらぬ話の一節も

想うひともすでに亡ければ

そぞろ涙は砂に消ゆ

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