第10話 姉と仲の悪い美優
放課後になり、妹の純は生徒会があるといい、聖奈さんと教室を出ていった。俺は美優だから、恋歌さんと柏野家に帰ることにした。
「恋歌お姉ちゃん、今日は寄りかかってもいい?お腹と腰が痛いの。」
俺は一人で歩くのがしんどいので、姉に甘えてみると、
「いいだろう。愚妹だが、顔色の良くない奴を私は放置しない。存分に甘えろ!」そう言ってくれたので恋歌さんの手を握ってくっついた。
(二日連続で恋歌さんと付き合っているみたいだ。美優はなんでこの姉と上手くいかないんだろう?いい人じゃないか。)
今日はこの、仲が悪い姉妹を掘り下げる事にしてみた。
(なんで仲良くできないのかが、不思議に感じたからだ。)
「お姉ちゃんはなんで私が嫌いなの?」ドストレートに聞いた。
「お前が真剣に生きないからだ。」
なるほどね、恋歌さんは清廉潔白な人だ。美優の奇行を許すはずが無い。
「今日はお姉ちゃんの言うことを100%聞くよ。私はお姉ちゃんと仲良くしたいから…。」
俺は嘘を付かずに真剣な眼差しで姉を見ていたが、
「お前の言葉は信用できん。だが、取り消しは聞かんぞ、美優!」
この姉は実の妹をゴミを見る目で見つめてくる。
(恋歌さんとの確執は相当あるみたいだな。姉妹には、壁が出来ている。)
「恋歌お姉ちゃん。今の私ならあなたの思いに答えられる。」
美優のため、姉と真剣に向き合っていくよ。俺は。
「お前…まあいい、今日はその状態はキツいだろ、だから甘えて構わない。」
そう言い、ギュッと手を握って寄りかかる美優(俺)を支えてくれた。
今はこの確執があっても良いけど、これからは毎週の火曜日が来る度に美優として姉との仲を改善していく。女性同士の付き合いに必要なのは互いに思い合う気持ち。俺は美優として姉と仲良くすれば、美優も辛い思いをしなくて済むはずだ…。
美優は美少女だから、ちやほやされていい思いばかりしている訳じゃ無いようだ。美少女の場合、男は外見しか見てこないし、女には嫉妬されてしまう。姉が過剰ぎみに内面を磨いているのも、美優の容姿の良さが少なからず影響している。姉は美少女で努力しない美優に激しく嫉妬している。
でも、お互い勘違いしているよ?美優がまったく努力しないのは、モテたく無いからだ。美優は体が細いけど、お腹はプニプニだし、胸も大胸筋を鍛えて無いから恋歌さんほど、大きくない。本当に自分の事を顔だけの女になるようへ意識を持っていっている。
奇行に走るのも、俺の体で満足しているのも、何もかも、顔が綺麗な美少女の自分への偏見に嫌気がさして嫌いなんだ。しかも、努力して自分を磨けば、もっと姉との差がついて、ますます恋歌さんが劣等感を抱いてしまう。
(本当は恋歌さんと仲良くしたいんだ。
でも、人は想像以上に容姿ばかりにこだわる。自分に劣等感を持つ人ほど、執着して、拗らせてしまっているんだよ?
「恋歌お姉ちゃん、本当は優しいんだね。私は憧れているんだ。だから、お姉ちゃんみたいになりたい。」
拗らせ美優の代わりに姉に本音を話すと、
「言っているだろ?私はお前の話など信用できない…って。今さら、世辞を言ってもどうにもならんぞ!」
怒っている口調だが、何処か優しい雰囲気に変わっていた。
柏野家に着いたあとも、俺は恋歌さんにベッタリ引っ付いて離れないようにした。少しでも、この姉妹に仲良くして欲しいからだ。
気持ち悪い!寄るな!って怒鳴られてしまったけど、懲りずに姉との距離を詰め続けた。やがて、観念したのか、何も言わなくなって諦めた。
「今日だけだからな!特別だぞ、美優。」
恋歌さんはそう言うと美優の体の俺を引き離そうとせずにいてくれた。
お金持ちのお嬢様だから、一緒に料理をすることもしないし、お稽古ばかりがあって二人は家で一緒にいることも無いんだろうな。でも、今日の俺は生理を言い訳にお稽古を休んで、姉にベッタリしている。そして、姉の稽古事を見ていた。柏野家長女がこんなに拘束されているとは思わなかった。
(美優は親の言うことも利かないから、両親からも当てにされていないのか?だから、問題児で家にはいらない二女を早々と許嫁の俺の家に放り出してしまった。)
でも、両親はこれだけ差を付けたら、姉妹に確執が生まれて…当然じゃ無いか。だったら美優のためにお稽古ごとをしっかりと受けよう。お嬢様がやっている文化系の稽古も体を鍛える運動もしっかりと覚えていこう。
俺は恋歌さんと最後まで行動して、そして恋歌さんの隣で眠る事にした。
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