コーディングのマエストロ

シヨゥ

第1話

「答えがないから面白い」

 疲れた顔を輝かせて彼はそう話す。

「無数にある解法の中でどれを見つけて、どれを選ぶか。ひらめきとセンスを問われているようで燃えるんだ」

 そう言いながらも彼の打鍵は止まらない。画面にはまるで呪文のようなアルファベットの羅列が続いている。

「人が作ったものをそのまま当てはめるのも良い。それを選ぶのもセンスだ。ただ僕は自分でそこにたどり着きたい。たどり着いた上で本当にそれでいいのかと問いただしたい」

 これで終わりとばかりにエンターキーを小気味よく押し込んだ。

「プログラムは芸術だよ。これは労働じゃなく仕事だ。僕に与えられた使命と言ってもいい」

「分かった分かった。だからそろそろ帰ろうな」

 疲れでハイになっている彼の肩に手を置く。

「芸術家だろうと三日三晩の徹夜じゃ死ぬ」

「まだまだやれるさ」

「もういい。もういいんだ」

 彼をデスクから引っ剥がすのにはまだまだ時間がかかりそうだ。これからの一悶着を考えるとため息しか出ないのだった。

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コーディングのマエストロ シヨゥ @Shiyoxu

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