朱明

第1話

死ねば楽になれる。 死ねば全てを理解出来るのではないかと思ってしまう。

歴史の中に生きた偉人達は、きっとほとんどの人間が、私より頭も良く勉強もしていたはずだ。

きっと私には教科書に載るような事は、成し遂げられないだろう。

しかし、歴史の中に生きた偉人達は皆死んでしまっている。

そして死の先にあるものを知ったものはこの世に居ない。

当たり前だが、よくよく考えてみたら死の先に全ての答え合わせが待っているのではないか、という考え方も出来る。

神は信じていないが、万物に訪れる死という物がどのような物か、それは生命が終わる、つまりその者の思想が止まってしまうということだ。 その者が生涯かけてやってきた研究があるとする。それは難解で後世に残るものであったとする。

しかし、それが理解し難いが正しい物であるとしか言いようがないものであったとする。 その者は生前それを盲信し、ひたすら研究したであろう。 時には非難もあったかもしれない、

しかし、それが途中であったとしても、完成していたとしても、死はいずれ訪れる。 その後どうなるのかは分からないが、きっと神がいるのであれば答え合わせでもしてくれるのだろう。 私は平等に訪れる死に、不条理を感じる。

そのため、最後の最後には救済があっても良いのではないかと思った。 私は宇宙に対して強く憧れを持っているため、あわよくば宇宙の全てを理解し酔うと思っている。

自分で言っている事だが、不可能だということはとうの前に、これまでの歴史が教えてくれた。

これまでのどんな偉人であろうと、宇宙の答えには辿り着けていないのだ。 そこで、私は死ねば宇宙という万物の起源の答え合わせがされるのではないかと思った。 死ねばその先に宇宙がある。そう思えば今生きている世界など簡単に捨てて閉まってもなんの後悔もないであろう。 私が学者であれば、論文などにまとめ後世に残し、人に伝えようと思うだろう。

しかし、私は自分のために自分の知りたい宇宙を求めている。

それならば死後の評価や人に伝えられないということも全く苦ではない。 ならば、酷く周りには反対されるであろうが、自殺という手っ取り早い方法がある。



しかし、生憎だが私はまだ宇宙の答え合わせを理解出来る自信は持ち合わせていない。 もう少し勉強をしてから死のうと思う。 そのための勉強するタイマーは生まれた時からセットしてある。私は信じていないが、人々が盲信してきた神という存在は用意がいいらしい。

特に問題もなければ、ざっとあと80年といったところだろうか。 それまでにもう少し知識を増やして、答え合わせに向かうとしよう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

朱明 @crimsontyphoon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ