今でも俺は
樹(いつき)@作品使用時の作者名明記必須
今でも俺は
5月24日…そっか、今日は元カノの誕生日か…
電車の中でふと目に入った新聞の日付で、今日が元カノの茜(あかね)の誕生日だと気付く。茜と別れてからもう二年がたったのか。
茜と付き合ってた頃は仕事が忙しく、会える時間をなかなか作る事が出来なかった。茜から「寂しい」とメールをもらっても、忙しさにかまけて返事すらまともに返せない日々が続き、とうとう茜から別れを告げられてしまったのだった。
自業自得、と言えばそれまでなのだが、それから俺は転職をし、やっと今は少し時間に余裕が持てるようになってきていた。
「あれ?あのイヤリング、茜がしてたのに似てる」
俺がいる場所から斜め前の吊り革に掴まってる女性のイヤリングに釘付けになっていた。
次の駅に着くとその女性の隣が空いたので、そこへ移動した。女性の顔を横目で見てみたが、残念ながら茜では無かった。まっ、そんな偶然あるわけないか。だが、イヤリングは茜がしていたイヤリングと同じ物のように見える。
イヤリングを凝視していたせいで、女性に怪訝(けげん)な顔をされてしまった。俺は正直に「そのイヤリング、どこで買ったものか教えていただけませんか?」と聞いてみると、その女性は驚いたものの詳しく教えてくれた。
イヤリングはハンドメイドサイトで購入した物で、そのサイトと出品者の名前を教えてくれた。
仕事の休憩中、そのサイトを見てみると…プロフィール画像は茜が飼っていた猫の写真、そして出品者の名前は猫の名前だった。俺と別れてから元気にしていた事が分かり、正直ホッとしていた。
帰宅してから茜のページを色々見てみると、ブログのリンクがあった。ブログの最新記事は5月24日。
ろうそくが乗った小さいケーキの写真が貼ってあり、そのタイトルが「今年も一人」とだけ書かれてあった。誕生日も茜と一緒。茜だと確信した。
そこからブログをさかのぼってみると、俺に関する事が色々書かれていた。
ハンドメイドサイトの茜のページには問い合わせ先としてメールアドレスが載せてあった。そのメールアドレスに電車の中であった出来事と俺のフルネームを送った。
送ってすぐにスマホが鳴った。その音は茜専用にしていたメッセージの受信音だった。
『お久しぶりです。私の商品を見かけたのですね』ととても他人行儀なメッセージだった。
俺はすぐに「ブログ見たよ。連絡先変わってなかったんだね。電話しても良いかな?」とメッセージを送った。ブログの内容をどうしても確認したかったのだ。
茜からオッケーのスタンプが届き、ドキドキしながら茜に電話をする。俺は「久しぶり…あ、あのさ。アクセサリーを作り始めたキッカケがブログに書いてあったけど…」と聞くと『うん。頑張って作っていれば、いつか目に止まる日が来るかなって、そうブログに書いたのは私の正直な気持ちだったよ。それに、あなたが私のページを見れば私だってすぐ気付いてもらえるように、あえてあの画像にしたの』と茜の声で正直な気持ちを伝えてくれた。その気持ちに応える為、俺も茜にこう告げた。「ここからは俺に言わせてくれ。今度はお前を絶対に寂しい思いはさせない。だから俺たちやり直せないかな?」
今でも俺は 樹(いつき)@作品使用時の作者名明記必須 @ituki505
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