第11話 執事ではない男
次の日
「ふわぁ~、あれ?」
今日の目覚めに何か違和感を覚える。
少しあたりを見回し、この違和感の正体を突き止める。
そうだ、マリアに起こされていない。
いつも通り、身を開けたその先は真っ黒で小汚い檻の壁。上を見上げると、天井があるのに黒すぎてまるで奈落から天を見上げているよう。
そういえばいつもはマリアに起こされている。そして、遊ばれ続け、飽きられて終わる。
それがルーティーンになっていた。
なんだろうこの違和感は。そもそもここに入れられる前はこのようにして起きていたはず。
なぜマリアは今日、起こしに来なかったのだ?
ここにきておそらく数ヶ月は経っただろう。今思えばなぜ、マリアは毎日起こしに来ていたのだろうか。
よく考えればそっちの方が不思議だ。
サルバドールさんが言うには、朝は何かしらの習い事があるはず。
まだ子供だし、毎朝きっちり起きられるものなのだろうか。
どっちの方がおかしいのか。
毎日毎日起こしに来ていたと考えるとなぜ今日は来なかったのか。それは意図的なものなのか。それとも来れなかったのか。
答えを探そうとしてもなにも手がかりがない。
もしかしたらそこまで気にすることではないのかも知れない。
毎日毎日同じことが繰り返されすぎて、少しの変化に敏感になったのだろうか。
私が頭を悩ませていると、檻の向こうの扉が開いた。
見ると執事が入ってくる。見た感じ今日はサルバドールさんじゃないみたいだ。
小柄の男性だった。
そういえばサルバドールさんはあの後、庭の探索してくれてたのかな。
そんなことを考えていた次の瞬間。
ガンッ!ガンッ!
料理を運びに来た小柄な男性の執事が手に持っていた鋭利な武器で執拗に檻を叩き始めた。
「え、なに!?なんなの!?」
するとその執事は叩くのをやめ、ボソリと言った。
「話し合いをしましょう」
「話し合い?」
「ええ」
執事は軽く返事をすると檻を叩くのに使っていたとがった石をその場に捨てる。
「まず、申しますと私はこの館の執事ではございません。
そしてあなたの敵ではないと言うことも言っておきましょう」
「そうなの?よかった~」
私は執事ではない小柄の男性の言葉に安堵した。
「しかし、私はあなたの敵ではないというだけであなたの味方だということでもありません。もし、やむを得ない状況があれば、あなたを切り捨てる所存でございます」
「なるほど。あの、あなたの目的はなんなのですか?」
「そうですね。あなた、アロクスという男は知っていますか?」
「アロクス?知らないです」
「そうですか、では地下の警備隊長といえば分かりますか?」
「地下の警備隊長?はい一応知ってはいますけど」
「そう。なら良かった。では、彼に会わせてくれませんか?」
「でも存在を知っているだけで実際に見たことはないですよ」
「そうなんですか、それは残念」
「あの、ここまで来る時、廊下に地下の警備隊長の部屋がありませんでしたか?」
「ありました。あの部屋はアロクスの部屋なんですね」
「そうですよ。知らなかったのですか?」
「そうですね。あいにく、さっき忍び込んだばかりだったので」
「そうなんですね。おそらくそこにいると思いますけど」
「では、見に行ってみます」
10分後
ゆっくりと扉が開く。
さっきの男性が帰ってきた。
「いましたか?」
「いいえ。いませんでした」
「そうですか、それは残念。ところでどうして警備隊長に会いたいのですか?」
「そうですね。あなたは彼の過去を知っていますか?」
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