第31話 襲撃
「おいっ!……噂の海竜が現れたぞ!」
船員が叫ぶ声が聞こえていた。
「落ち着け! 射撃兵、超大型バリスタを構えろ」
「海竜なんざ怖くねぇ。バリスタ当てりゃクジラだって一撃だッ!」
……おかしい。魔力で視覚を強化して海を覗くと、海竜と思われる魚影は一つだけではない。……一つ……二つ……いや、もっとだ。
「おいおい……どういうことだよ。話が違うじゃねぇか」
「……魚影が…………その数!……八ッ!!!」
まるで船を取り囲むように海の中から巨大なウツボのバケモノが姿を現す。巨大なバケモノは鎌首をもたげて獲物を見定めている。
『おい、ありゃ……竜か?』
「恐らくは……。でも……なんか変」
黒竜紋が反応している以上は、あのウツボモドキが竜絡みの存在であることに間違いはない。だがそれにしても反応が弱すぎる。
『……どういうことだッ? 小娘、何でも言い。言ってみろッ』
「竜のはず、なんだけど……反応があまりに薄く、弱い」
竜が複数体現れる事例はほとんど無い。そもそも竜は自身をピラミッドの頂点の存在だと自認しており。そのため、通常は同じ竜であっても協力することなんてない。
(……いや、可能性がゼロではない。事実私の里が襲われた時は、竜の群れが襲ってきた。……だけではなく、連携しているようにすら見えた。……今回も、それと同じ?)
『タニア、アレをやるぞッ!』
リューの言葉に意識が引き戻される。考えるのは後で良い。私は目の前の敵を斬る。それだけができれば良い。
「アルマトスフィア」
『限定展開ッ!』
両脚部と両腕部にアルマを纏い全速力で甲板を駆け回る。
◇
「チッ、自慢のバリスタでも一撃では死なねぇか……」
バリスタの砲撃手が舌打ちをする。だが、当ててくれただけで大助かり。捕鯨用の巨大バリスタにはワイヤーが取り付けられている。つまり当てれば、動きをかなり制約できる。……つまり。
――スパァンッ
この通りだ。いかに巨体とはいえ、拘束された相手の首を斬り落とすのは造作もない。甲板の上で惨めにのたうち回るウツボモドキに巨大なギロチン――龍殺し包丁を落とすだけの簡単な仕事だ。
「……ひゅーっやるねぇ。見知らぬ嬢ちゃん。助かったぜ!」
私は親指を立て、グッドサインを作りそのままウツボモドキと交戦している場所に駆けつけ、ウツボモドキの首を刎ね、少しずつ減らしていく。
『へへへッ。小娘もやるじゃねぇか』
「でも、ちょっと弱すぎない……?」
『それはちょっと妙なんだよな……』
「奥の手を隠さずに死ぬなんてあり得る?」
『情報が少ねぇ。一旦、判断保留だ』
「了解」
『まずは雑魚をブチ殺すぞッ! 残り三匹だ』
残りの三匹はバリスタを警戒してか、ある程度攻撃が慎重になっていたが、魔法でチクチクとダメージを与えてヘイトを稼ぐことで、斬り殺すことができた。
「っと、これで八匹全部始末したわ」
甲板の上に並ぶ八つの首を見て、船員達は歓声の声を挙げるのであった。
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