このラブコメ部はラブコメができない!
ニッコニコ
ラブコメ部、爆誕!
第1話 入学式から始まるラブコメって珍しくない?
何となく。
数年後の自分は何をしているのかと、自身に問いかけることがある。
とりあえず10秒くらいで様々な格好をした自分を思い浮かべてみて、一つ一つにバツ印を重ねる。
やはりどれもしっくりこなくて、最終的に頭に残る映像は無形で透明だ。
でも、今日からは違う気がするのだ。
なぜなら――――今日から俺は高校生なのだから!
『生徒会長挨拶、甘寧明香』
「はい」
生徒会長が凛とした響きで返事をすると、モデルのように堂々と壇上に上がった。
さっきまでこの場を支配していた退屈ムードは霧散していて、今はきっと誰もが目の前にいる会長の一挙一動に息を呑んでいることだろう。
一礼し終えた会長が顔を上げてると、彫刻のように美しい顔があらわになり、新入生たちは歓声を上げた。
燃え盛るような赤髪に、少しツリ気味の黄色い大きな瞳。
女神さまのように会長は美しかった。
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます」
言い終えると同時に会長は優しく微笑むとまたしてもあちこちで歓声が上がる。
「視線こっちくださーい!」
「あすたーん!!!」
「でゅふ!あすたんはやはり今日もお美しい!」
そう、かんせい、が…………?
違うぞ。これは俺の聞き間違えだ。
今は入学式。こんなアイドルのライブ会場でしか聞かないようなコールが聞こえてくるはずがないんだ!
確かに、この学校の生徒会長は驚くほど清楚で、美人だ。芸能界にいてもおかしくはないと思う。
でも、でもだ。
そんな挨拶ひとつで、大砲のようなカメラを構えてる先輩や、サイリウム(オレンジの1番眩しいやつ)を両手で振り回してる先輩や、半裸でバラを咥えてる先輩は普通集まらないよな!?
しかも俺の隣でうにょうにょ動いてるのが最高に不快だ!
どうなってるんだこの学校は!?
そして会長、どうしてツッコまない!
最前列で繰り広げられているこの悪夢を目の当たりにしてもなお、なぜ淡々と話せるんだ!?
って、違う!コイツら先輩じゃない!?
よく見たらブレザーの胸ポケットに、入学おめでとう!ってなんか刺してあるわ!
「最後に、本校では挑戦を恐れない。を校訓として掲げています。この心を――――」
会長のその一言に、上がっていた熱が急激に低下していいくのが分かった。
挑戦を恐れない、か。
どうして、失敗するかもしれない様なことを恐れずにできるのか。
失敗がもたらすものは成功への希望なんかじゃない。
努力の、過去の自信の否定でしかないというのに。
唇をぐっと噛み締めると、徐々に鉄の味が口の中を満たした。
「そこの新入生3人、あとで私の所に来るように」
「「「ありがとうございます!」」」
その返事は違うと思うけどな。
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