209. 私のターン
209. 私のターン
帰り道。電車の中。オレは北山と約束した通り、事情を説明して黒崎に協力してもらうことにする。
「あのさ黒崎」
「何かしら?」
「あー……そのさ。オレと一緒の部屋の2組の学級委員の北山がさ、黒崎と一緒に泊まっている女の子と付き合ってるみたいなんだよ」
「昨日聞いたわ。幸せ初々しかったわよ?」
なら話しは早い。でも、そうなるとオレと黒崎は残り2日一緒の部屋で寝泊まりすることになるのか……。
「それでだな。今日から北山と部屋を交換できるか?」
「えっ……」
「ああいや。先生に見つかるかもしれないから、無理にとは言わないけどさ、北山の気持ちを聞いたら協力してやりたくなってさ……」
「……そうね。わかったわ。私も協力する」
「いいのか?ありがとう!助かる!」
よし!これで北山との約束は守れたぞ!
あとは先生に見つからないように荷物をまとめて部屋を交換できれば完璧だ!
「待って。1つだけ聞かせて。神原君は本当にそれでいいの?」
「どういうことだ?」
「だって……あなたは夏帆ちゃんと付き合ってるじゃない?」
「別に何もしないし、お前とは何回か寝泊まりしてるだろ?問題ない。」
「……。今まで2人きりなんてなかったじゃない……。」
「えっなんだって?聞こえなかった」
「何でもないわ」
黒崎は少し複雑な表情を浮かべた。どうしてそんな顔になるんだろう。ただ一緒にいるだけだというのに。
そして夜、オレ達は無事に部屋を交換することに成功した。黒崎の協力のおかげで、先生にもバレずに済んだようだ。
「ありがとな黒崎」
「いえ。……私のターンはあと2日」
「なんか言ったか?」
「何でもないわ」
黒崎はさっきの帰り道とは違い、いつものように微笑みながら首を横に振った。こうして、オレ達の修学旅行の2日目の夜が始まるのだった。
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