175. 思い出に浸る

175. 思い出に浸る




 翌朝。今日は天気もよく絶好のキャンプ日和だった。山を少し歩くとキャンプ場に到着し、受付を済ませ、早速準備をすることにする。


 まず焚き火台の準備を始める。これは組み立て式になっていて、簡単に組み立てられるようになっている。しかし、これが意外と難しくて、オレが悪戦苦闘していると、いつの間にか千春が隣で手伝ってくれていた。


「あ、ありがとな」


「これくらいお安い御用だよ。それにしても秋兄は昔から不器用だよね。」


 そう言って千春は微笑む。昔はいつもこうやって一緒に遊んでいたんだっけ。なんだか懐かしい気分になる。


「よし、できた!」


 なんとか無事に組み上げることができた。次に薪を集めに行く。これはあらかじめ持ってきたものを炭にしたものを持っていくことにした。というのも、このキャンプ場には薪を売っているところがなかったからだ。そのため事前に買っておいたのだ。


「これでご飯が作れますね!じゃあ定番の焼きそばは私が作るので、冬花先輩はお肉でも焼いておいてください。」


「え?私も手伝うわよ?」


「大丈夫です。冬花先輩は料理下手じゃないですか?だからお肉でも焼いておいてください。」


「ん?なんか悪口言われたかしら?まぁ分かったわ。火起こしでもしておくわね」


 そう言って夏帆は颯爽と調理場の方へ行く、黒崎は火起こしをするようだ。まぁ、確かに夏帆が一番料理が得意だから任せてもいいかもしれないな。とりあえず暇になったな……。


「じゃあオレは魚でも釣ってくるかな。」


「あっ秋兄。私も行ってもいい?」


「もちろんいいぞ。じゃあ一緒に行くか。」


「うん」


 そうして2人で川まで歩いて行った。ここは川魚が釣れるみたいだからな。頑張ってご飯にしないと。


「じゃあ釣り始めるか」


「そうだね。なんか懐かしいね?」


「ああ、昔はよくオレの実家の近所の川で一緒に釣りしたもんな」


「うん。あの時は楽しかったなー。」


「今も楽しめばいいだろ?ほら、餌つけてやるから貸せ」


「ありがとう。ふふっ楽しみだなぁ」


 そんなこんなで釣りを始める。お互い無言の時間が続く。だが、その沈黙はとても心地よいものだった。しばらくすると、竿先がピクッと動く。どうやら当たりがあったようだ。


「おっきたな。どれ…………結構重いぞこれ……」


「秋兄頑張って!」


 なかなか引かないため、少し焦るが何とか引き上げることに成功した。そこにいたのは50センチほどある立派なマスだった。


「おお……これはすごい大物だな」


「すごい!やったね秋兄!」


「おう!あと何匹か釣りたいな!よしやる気が出てきたぞ!」


 こうしてオレと千春は昔を思い出し、懐かしみながら釣りをするのだった。

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