167. 喜んじゃダメなのに

167. 喜んじゃダメなのに




 今日は日曜日。来週のお泊まり旅行の件を千春に伝えることにしている。その前に千春の誕生日を祝って上げようと思い、千春と共に出掛けている。


「あの秋兄。夏帆さん怒らない?大丈夫なの?」


「ああ。心配するな。許可はとってあるから。」


「夏帆さんが?なんか怖いんだけど……でもせっかく秋兄と二人きりだし……楽しまなきゃ損だよね」


「ん?なんか言ったか?」


「ううん。なんでもない。今日は私の誕生日だから楽しもうって。」


 そうしてオレ達はショッピングモールに来た。そこで色々見て回る。千春の服を見に行ったり、ゲームセンターでクレーンゲームをしたり、プリクラで写真を撮ったりした。


 千春とこうやって2人でいるのは久しぶりだし、成長した千春を見ていると不思議な感覚になる。


「いっぱい回れたけど、少し疲れたね。」


「そうだな」


「ちょっと休憩しよう。あそこのベンチで」


「ああ。なら飲み物を買ってくるよ。何が良い?」


「ありがと。じゃあミルクティー。」


 オレは飲み物を二つ買い、一つを千春に渡す。そして二人で並んで座る。


「ありがと。いただきます。」


「どういたしまして。あと遅くなったけど誕生日おめでとう。」


「え?」


「さっき色々回ってる時選んだんだ。プレゼントだ?」


「全然気づかなかった。開けてもいい?……わぁ!可愛いヘアピンだ」


 すごく嬉しそうな顔をしている千春。喜んでもらえて良かった。


「ありがとう秋兄。大切に使うね。」


「おう。気にいってもらえたら嬉しい。」


「……喜んじゃダメなのに。秋兄は夏帆さんと付き合ってるのに……」


「ん?どうかしたか?」


「ううん。なんでもない。そろそろ帰ろうか。あんまり遅いと心配させちゃうし。」


「じゃあ帰ったら誕生日パーティーな。ケーキも買ってあるから」


 千春の様子が少しおかしいような気がしたが、有意義な時間を過ごしそのまま家に帰るのだった。

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