小説教室

kara

自分の文の響き 文はうきうきと その1

問一 一段落~一ページで声に出して読むための語りの文を書く。


・方言とか木の種類とか適当なのでそこら辺はスルーしてください


 少女は坂道を歩いていた。そこは山の中だった。ぽかぽかと日が照って散歩するにはいい陽気だった。山道だが皆が通るので、凸凹は少なく案外歩きやすい。彼女はくねくねと曲がる道をてくてくと進んでいった。

「あの山の向こうには海があるさ」

 祖母はそうやってよく話をしてくれた。

「山を登って頂上を超えたら、見渡す限りの地平線さあ。おめえも昔見ただろう」

 そう言われ、彼女は記憶を手繰たぐり寄せようとする。とてもとても小さい頃、母親に抱っこされ、山のいただきで青い海を見たような…

 けれど、それはあまりにも遠くの出来事で、本当にその景色を眺めたのか定かではない。

「覚えとらんか。あんときゃ、おれもおったんだがのう」

 そう言って老婆は遠い目をして思い出に想いをはせる。その懐かしそうな嬉しそうな顔を見て、彼女はそこへ行こうとそう心に決めたのだった。

 だいぶ歩き疲れて、息が切れてきた。春先なのにやたら暖かく、ひたいに汗がにじむ。脇腹わきばらが少し痛い。その箇所を手で押さえながら少しばかり速度をゆるめた。辺りを見回すと、新緑がしげり、薄い赤色の花や木蓮などが咲いている。メグロがたまにすいすいと木々の間を飛んでいる。美しい光景に見とれ、しばし立ち止まった。携帯を取り出して二、三枚撮ると、また歩き出す。風が少し強くなってきた。

 さっきまで草木の匂いしかしなかったのに、違う匂いが混じっている事に彼女は気づいた。潮風だ。あと少しで海が見られる。少女の心は踊った。はやる足で頂上を目指していった。


  了

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る