トルコ一人旅で出会った美少女の家に泊めてもらったら驚愕の場所に連れて行かれた話
四辻さつき
前編
約13年ほど前に、トルコに10日間ほど女一人旅をしたときのエッセイ「トルコ一人旅で出会ったおじいちゃんに予想外のことを言われて泣いちゃった話(https://kakuyomu.jp/works/16816927861706799687)」が好評だったので、同じ旅での別の出会いエピソードも書いてみたいと思う。
それは、トルコの有名な観光地の一つである、パムッカレへ行ったときのことだった。
パムッカレとは、石灰棚が有名なところだ。石灰でできた大きな丘があって、無数の窪みに水が溜まっており、その水が石灰の効果できれいな青色に見える。「一度は見たい世界の絶景」的な映えスポットだ。
が、現地へ行くと、水が溜まってるところは天然のプール扱いされていて、たくさんの観光客が水着でキャッキャウフフと水遊びをしていた。まあ、有名な絶景ってそんなもんだよね。
その近くには「遺跡プール」があった。ローマ帝国時代の遺跡の上に天然の炭酸水が湧いていて、そこがなんと泳げるプールになっているのだ。ちゃんとロッカーや更衣室も整備されている。
遺跡をプールにしちゃおうという発想に驚くが、このあたりは遺跡だらけなので、一つくらいいっかみたいな贅沢さとおおらかさを感じられる施設である。
ところが、私はほぼノー下調べでぶらり旅をしていため、水着どころかサンダルも持っていなかった。そのため、どっちも「いいな〜」とか思いながら眺めるだけで終わり、時間を持て余してしまった。
しかし――そのおかげで、私はその美少女に出会えたのである。
彼女は、遺跡プールから少し離れた場所で遊んでいた。
暇だった私がなんとなく眺めていると、その子も私に興味を持って近づいてきた。
彼女は、めちゃくちゃ美少女だった。
艶のある黒髪に、大きな黒い瞳、キリリとした黒い眉。睫毛が長く、鼻筋がすっと通って、大きくなったらさぞ美人になるだろうという顔立ちである。
だからというわけではないが、私達はなんとなく一緒に遊び始めた。言葉はほぼ通じなかったが、私のデジカメで遊んだり、遺跡で隠れんぼしたりして楽しんだ。
しばらく遊んでいたとき、どこからか、彼女のママと弟、そしてパパがやってきた。後で分かったことだが、彼女のパパがこの遺跡で働いていて、その日は彼女とママと弟で遊びに来ていたらしい。
家族で何やら話し合ったあと、トルコ人らしいやや太ったお腹の父親が、ニコニコしながら話しかけてきた。
「娘が、君のことをとても気に入ったと言っている。ぜひうちに泊まってくれないか」
へっ!? と、泊めてくれるの……??!
あたかも、RPGで美少女をモンスターから助けたときに発生するイベントであった。遊んでただけなのに。
美少女に期待に満ちた目で見つめられ、私も嬉しくなって、知り合ったばかりの彼女のお家に泊めてもらうことにした。
ちなみに、別に宿に困っているわけではなかったので、美少女のためにその日の宿をキャンセルし、翌日取っていた飛行機のチケットも変更した。
その美少女の名前はベステ(当時8歳)、弟はアフメッド(当時5歳)。父親と母親の名前は忘れてしまったので、パパさん、ママさん、と表記する。
そこから、車で一時間余り。ベステ一家の家は、住宅街のアパートの一室にあった。
その夜は、とても楽しく過ごさせてもらった。大はしゃぎのベステとアフメッドと遊んだり、広いベランダで月を見ながら夕食を食べたり。
ちなみに、トルコはベランダがとても広い建物が多かった。地震国の民から見ると不安になるほどだが、そこに置かれたテーブルセットで食事をしたり、遊べたりするのはとても素敵だった。
めちゃくちゃ突然のホームステイにも関わらず、パパさんとママさんは心尽くしで歓迎してくれた。
唯一の問題といえば――英語が通じるのが、観光地で働いているパパさんしかいなかったことだ。
パパさんとは問題ないけど、ママさんや子ども達と、ちゃんと意思が通じるかな? とちょっと心配だった。
ところが――その翌日起こったことを、結論から言うと。
ママさんや子ども達とは、言葉が全く通じなくても通じ合う体験ができた。
しかし、まさかのパパさんと、言葉が中途半端に通じるせいで、盛大なすれ違いをしてしまったのだった。
後編に続く
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