第41話

夏休み10日前。朝からアン子はやはりまだ白い布を手に巻いていた。


「もう夏休みに入るぞ。腕の調子はどうなんだ?」


今日もセミがうるさく鳴いている。


「もうすぐギブスがとれるから大丈夫なん!問題無しなん!」


「そうか!出発日が8月になったから平気だな!」


「お弁当も片手で作ってきてるん」


「それはありがたい」


すみれは車登校ではなく、こちらにかけてきた。


「平気?もうすぐチケット取るけど」


「大丈夫なん!」


「よかった…。8月になったけど、楽しみねぇ」


昼休み。屋上は日が照って暑いなぁ。3人はドアの日陰に着席して、弁当を2つ食べていた。


「ワクワクしてきたの!」


「アン子は治す事だけに集中しろ」


「8月なら平気でしょ?」


「俺はダイビングする金をバイト料でかせいだぜ」


「もう…そんなお金、私が渡すのに」


「いや、出す所は出す!そのかわり飯代は頼む!」


「私はチケットもホテルも確保してるのよ?キョースケとアン子はパスポートだけは死守しなさいよね!」


午後の授業も暑いだけで、ひたすらけだるかった。


生徒の1人が立ち上がって言った。


「先生!やはりクーラーは入れて欲しいです!」


「そーだそーだ!」


しかし生徒からの陳情もむなしく、


「無理な物は無理だ!先生だって耐えてるんだぞ!我慢しろ」


生徒はシュンとした。


となりのクラスのすみれは、扇子であおいでいた。


「あついわね~」


電池で動くミニ扇風機も常備させていた。


男子生徒はほぼ皆すみれの方を見ていた。さすが学園イチと名乗るほどの事はある。


「金髪がちょっとプリンになってきたわね~染め直さないと。ネイルもいまいちパッとしないわね~」


「僕がカネ出しますよ!」


「いい美容院やってます!」


もう混乱状態である。

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