第36話

「まずは一番底に抹茶シロップを入れるのよ」


「はい」


「それから、砕いた氷を乗せる。あとは抹茶ソフトを入れるわけ。チョコがけだからチョコも忘れずにね!」


俺は先輩の仕事を1週間密着取材のように張り付いて聞き耳をたてていた。


「いまのが基本と言ってもいいわ。あとは種類によって変わるだけ。暖かい飲み物はまた別よ」


「は、はい」


「でも今の季節暑いからね~。フラペチーノが多いかなぁ」


「そうなんですね」


「あとコーヒー1杯で席に居続ける客が多いけど、文句はいっちゃだめよ」


「わかりました」


頼りになる女性先輩である。


「わたしね~近く辞めるのよ、ここ」


「え?どうしてですか?」


「ちょっと遊んでから、また違うブザーバックスで働こうかなって。引っ越しも考えてるの」


「それは残念ですね…せっかく会えたのに」


「それまではじっくり教えるから、何でも聞いてね」


「チョコバナナフラペチーノ入りました!」


「はーい!これはねオッドアイ君、チョコシロップをかけて…」


今日も速攻でバイトが終わった。作るより覚える方がはるかにきつかったが、これは慣れていくしかないだろうと思った。


再び女性店長がやってきて、


「どうだった?」


「さすがに覚える事多くて、大変っす…」


「正直でよろしい。また2日後ね」


「はい!」


俺は自転車で家路についた。真っ暗なのでライトを点灯させる。


夜は風呂に入ると速攻眠くなった。布団に入るとアン子からのらぁいん通話が来ていた。


「キョースケ、バイトがんばってるのん?」


「おうがんばってるぜ!まだ見習いだけどな、覚える事が多すぎなんだ」


「近い内にウチもお店いくからよろしくなの!」


「見習い過ぎてから来てくれよな?」


アン子と会話した直後、今度はすみれから通話が来た。


「ブザーバックスでまだ働いてるのかしら?」


「ああ、まあな」


「ブザーバックスなら行っても恥ずかしくないから、しばらくしたら行ってあげてもいいわよ」


「いいさいいさ。見習い卒業したら来いよな」


「それじゃあね」


見習い期間が終わり、俺が作る番になった頃、厨房にオッドアイの人がいると聞きつけて列ができていた。


俺は必死にオーダーを受け、作って渡す作業を繰り返した。これだけ繰り返すとさすがに慣れて来る。


「本当にオッドアイだ~すご~いv」


JKがキャピキャピしながら注文の品を受け取る。


オッドアイがなんだ!中身、実力の方をほめてくれよ。


のどまで出かかったがやはり口にするのは、はばかられた。


行列にウチに女性店長はとても満足していた。


「オッドアイ君、君のおかげよ」


「はぁ…(これで良かったのかな)」


何とも腑に落ちない感じで就業時間は終了した。外はもう真っ暗である。


「気を付けてね!」


店長に見守られながら、俺はライトをつけ、自転車で帰ろうとしたのだが。

12人前後の女性が俺をことを待っていた

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