第31話

(暑いなぁ…)


授業中。俺はテキストを、うちわ代わりにあおいでいた。しかし来るのはぬるい風だ。


グァムのようなカラッとした熱さが恋しかった。あの海を体験したら、学校のプールにはもう入れない。


だるくてうなだれていたが、先生からチョークが飛んできた。


やっと昼休みになった。俺は2人分の弁当を食べながら言った。


「最近、俺体重が上がってるんだ。どうしたらいい?」


2人は答えに戸惑う。


「まあ筋トレはしてるからいいけどさ。食事が偏っているんだ」


「そんなのパラオの海で泳げば何とかなるわよ」


すみれは慌ててフォローした。アン子は黙って自分の弁当と格闘中。


「次はアン子にも水着買ってやるからな」


「私の水着は~?」


「お前は水着持ってるじゃないか。俺は夏休み期間はバイトするつもりだから」


「どんなバイト?」


「コンビニかガソリンスタンドかな」


「似合ってるわよ。ウチの車を洗車したらバイト代あげるけど?」


「すみれにこれ以上『おんぶにだっこ』じゃだめだ。俺がなんとかする」


「ウチもバイトしてるのん!」


「涙ぐましい努力だわ」


「あー早く夏休みにこねぇかなぁ。学校によってはクーラーのある学校があるんだぜ?うちおかしくね?」


「辛抱しましょう」


2個目の弁当を平らげた俺は3人で屋上のドアへ向かっていった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る