第13話

「何でパスポートひとつ持ってないわけ?」


金髪は授業前から神経質そうに言った。


「パスポートできるの期間は長いのよ!…まぁ待ってあげるけどね、一緒に行くんだし。」


「アン子もいくのん」


「お前は来なくてよし!」


そう言うとピリピリしながら教室を出ていった。


「アン子もパスポート取って、一緒に行こう。な?」


「南の島楽しみなん‼」


そう言って、いつもの謎ダンスをやっている。


先生がクラスに入ると、謎ダンスは強制終了する。


「担任が遅刻したので、1時間自習!」


生徒側は皆、歓喜に包まれた。


アンコが席を近づけさせて、


「キョースケ、お互いにクイズやるのん」


「クイズなら得意だぞ!俺からな!パンはパンでも食べられないパンはなーんだ?」


…アン子は思案しながら、


「すみれが作ったパン…」


何かリアルだな…。まあいい。


「アン子の番だぞ」


「クロロホルムで人を眠らせるのか可能か?」


よくハンカチにクロロホルムを使って女性の口をふさいでるシーンをいっぱい見てる。


「イエス!」


アン子は口を3のようにさせて、


「ぶっぶぅ~~!」


「なんでだよ!」


「相当量のクロロホルムを吸引させないとダメなの~はい次」


俺は悩んだあげく

「オッドアイよりも凄いのを何という?」


「ダイクロイック・アイ」


アン子は即答で答えた。こいつは並みじゃない。次はアン子の番だ。


「お酒に睡眠薬を一錠混ぜて昏睡させることはできるか?」


う~ん難しいけど、1錠くらいなら別にヘーキじゃないのか⁉


「ノー!」


「ぶっぶううぅ~~3」


「えっ可能なのか?」


「ロヒプノール」だと10人中8~9人は意識を失うの」


「何でそんな事知ってるんだよ…」


「もう1回いくの!睡眠薬とお酒で自殺はできるか…」


「まてまてまってくれ‼なぜお前のクイズはそんなに暗いんだ!」


「キョースケは死にたくなったりしないのん?」


「俺はない!」


「ウチはあるの…父親が去っていった時とか…」


「忘れちまえそんな事!クズのヤツなんてよ!それより、今俺すげー腹減ってんだ。俺の弁当くれないか?」


「バレ」ないのん?」


「一番後ろだからバレないさ。さぁ早く」


「ほれ、なの」


弁当をもらい、教科書で隠しながら食べる。


相変わらずミートボール祭りである。嫌いじゃないからいいけどさ。他の栄養取らないと倒れてしまいそうだ…。


5分で食べてから、容器をアン子に返す。


「ごっそさん」


アン子は無言で弁当箱をバッグに入れた。まんざらでもない顔をしている。


「パスポートは休日はやってないからなあ。学校に遅れてもいいから申請してこようか!」


「任せるの。なんなら今日行ってもいいの…」


「今日?」


聞き返した途端、アン子は眠ってしまっていた。バイトとかけ持ちで疲れているのだろう。

そして4時限目まで顔を上げる事はなかった。

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