産声の種

ニシダマサキ

ゲームの犬

また負けた。

今日はもう何回負けただろうか。

毎日コレをやっているのに、いまだにその領域へ到達する予感がしない。


「クソだわまじで…」


ほんとうにイライラする。

なんで負けているのか分からない。

一生このまま変わらないのかと思うと、恐怖心や絶望感が湧き上がってくる。






こどもの頃からゲームはずっと好きだった。

いつから熱中し始めたのかは分からない。

気づいたら毎日のように触れていた。


そのうちプロゲーマーに憧れるようになった。

ゲームをやって稼げるなんて、どんなに幸せなことだろうか。

華々しく取り上げられるプロゲーマー達を見て、いつか自分もなりたいと思うようになった。


そう志してからは、高校を辞めて家に引きこもる生活を続けている。

中卒のニートになったわけだが、そんなことは気にしていない。

プロゲーマーになったらこんな肩書きも関係なくなるんだ。

絶対に成功させてやる。






だが、そう上手くいくような甘いものではなかった。

ゲームといえども勝負の世界。

必ず勝者と敗者に分けられる。

誰かは勝って誰かは負ける。


俺は今、敗者側の人間だ。

勝者側への道が開けるような気配はない。


それでも、諦めてはいない。

諦めてはいけないんだ。


もうどこにも逃げられない。

ここで勝てなかったらどうするんだ。

他の道なんて残されていないのだから、ここで死ぬ気で成功をつかみ取るしかないんだ。






椅子に座り直し、マウスとキーボードに手を当てる。

もう一度プレイしようと思ったところで部屋のドアが開く。




「……、もうそろそろやめたら…」


「うるさいっ、邪魔するなよっ!」


「……」




静かにドアが閉じられる。

たまにこうしたことがある。

どういう意味で言っているのか分からないが、言われるたびにイライラが爆発する。

俺がゲームをやめるなんてありえない。






………






次のゲームが始まった。


今度は勝つ、そう思いながらまたモニターを見る。

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