階級と色々な問題



病室で過ごしている最中、

霧島恋は再手術によって病室から離れていた。

その間、俺は現状を整理する為に病室に置かれたコルクボードをベッドに置く。

俺は原作の内容を思い浮かべる。

霧島恋が死亡、それによって起こる事件。

通称『地区戦争』、…化物を倒す為に存在する狩人が愚かにも地位を求めた事による悲劇。

俺は早速、原作で関わった登場人物の名前を書く。

元の世界での『東京』では二十三区あるが、『㯥京』では十六区しかない。

その十六区には、地区内管轄者と言う肩書を持つ狩人『地区長』が居て、その下には地区管轄の『班長』が存在する。

霧島恋はその班長の直属の部下であり、待遇の良さから専用狩猟奇具を得ると言う恩恵も受けている。

「此処で登場するのが…」

七原班、稲元班、大久庭班、斎班の四つ。

この四つの班が、『地区戦争』に関わって来るのだが…。

「えーっと…」

俺は手帳を取り出した。

それは狩人となった時に与えられる品物の一つであり、狩人協会が定めた階級制度が書かれている。



狩人協会実戦部隊階級。


最上階位『天盤』

年俸/契約更新時交渉次第

人数/約10名


第一階位『止級』

年俸/契約更新時交渉次第

人数/約50名


第二階位『部級』

年俸/契約更新時交渉次第

人数/約100名

恩恵/特殊狩猟奇具『狩衣』の受注が可能となる。地区内管轄を受け持つ事が出来る。

階位の昇格、降格、引退、殉職、何れかが起きた場合、地区管轄内に配置された『保級』から後続として指名出来る。


第三階位『保級』

年俸/千万単位(上位)

人数/約300名

恩恵/複数名による班を結成しての活動が認められる。上層部から『以級』の育成依頼を与えられる。医療機関に掛かった場合、治療費を免除される。


第四階位『仁級』

年俸/千万単位(下位)

人数/約600名

恩恵/階位就任時に(以下略)。単独での活動を認められる。


第五階位『波級』

年俸/百万単位(上位)

人数/約900名

恩恵/階位就任時に専用狩猟奇具の受注が可能。 申請によって二人一組での活動を認められる。


第六階位『呂級』

年俸/百万単位(下位)

人数/約1000名

恩恵/量産型の狩猟奇具(以下略) 申請によって二人一組での活動を認められる。


第七階位『以級』

年俸/時給制

人数/約3000名

概要/訓練生、三年間の訓練に一年間『保級』の下で実働を行い、階級が上がる。

恩恵/量産型の狩猟奇具『斬機』壱式~伍式まで使用可能。



因みに俺は第六階位『級』、百槻は第五階位『級』だ。

此処に書かれている、第二階位『級』に書かれている内容を確認した。

其処には、階位の昇格、降格、引退、殉職、何れかが起きた場合、地区管轄内に配置された『保級』から後続として指名出来る。と記載されている。

この地区の地区長は高齢であり、引退を考えているらしく、近い内に『保級』の中から誰かを指名する。

班長らは、この後釜を狙い、様々な策を練っては他の班長を陥れようとしていた。


その一環、戦争の火蓋となるのが、霧島恋だった。

彼女は稲元班に属する狩人だ。器量の良さ、戦闘力、自己献身性、それらが評価されて、稲元班の中では屈指の実力者である。

そんな折、七原班が彼女に目を付けた。狩人としての素質に、おまけに美貌も備えている、彼女を稲元班から引き抜こうと考えてアプローチを出していた。

この情報を聞いた稲元班長は、七原班に靡こうとしている霧島恋に激怒した。しかし、それを彼女に伝える事なく、外見上では良好な関係を演じていた。

内心では、彼女の処遇をどうするか、考えていたのかも知れない。

そして、商業ビルでの事件が勃発。上層部が班長らに依頼し、それを部下に要請する。

今回は、地区管轄に当たる班長の部下が商業ビルに化物退治しに行く事になったのだ。


が、化物の多さに部下は救難信号を発信。

その発信は、七原班長だけではなく、他の班長にも送られる。

連絡が来た稲元班長はそれを利用して、稲元班長は管轄外である商業ビルへと霧島恋を向かわせたのだ。

本来は担当管轄外の人間は余程の事が無い限りは出しゃばる事は無い。


けれど、全員に送信された以上は無視する事は出来ない。それでも、自らの手駒を危険な目に遭わせる程ではない。

しかし、稲元班長は違った。これは霧島恋に対する制裁でもあり、これで彼女が手柄を上げれば稲元班の評価も上がる。

仮に彼女が重傷を負ったとしても、それは全班長に助けを求めた七原班の部下が原因、つまりは七原班長の責任となる。

どう転んでも稲元班長にとって良い結果しか残らない。


しかし、霧島恋は未確定闘級の『蛟』によって死亡。

自らの班の人間を殺された事に対する責任を七原班長に取る様に指示。

七原班は責任は取れないと断固拒否し、立場や評価が著しく下がってしまう。

更には未確定闘級が特級と判断され、それを放置していた事に対する責任を上層部に取る様に言われてしまう。


此処で七原班長は失脚する事になるのだが…七原班長は、今回の事件に対して逆上、狩人としての立場を忘れ復讐を決意する。

そして始まる元七原班による『狩人狩り』、稲元班と大久庭班が対象に闇討ちが始まるのだ。

それが…この『地区戦争』の実態、彼女の死によって起こる闘争劇だ。


「けど…」


霧島恋は生きている。

それに従い、彼女を殺し損ねた『蛟』の闘級は未だ未知数となる。

推定特級だが、それでは七原班長が責任を取る程では無くなる…、それに従い、復讐もなくなるので『地区戦争』は起こらない。

そうなるとその先のルートも完全に別物となる。

さて、問題はここからだ。此処から先は完全に別ルート。俺の知らないシナリオとなる。

このままどうなるか…少なくとも、俺は原作知識を利用して上手く立ち回る事しか出来ないが…。


退院したら…狩猟奇具の調達でもしようかな。

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