第22話 裏垢女子といかれたお茶会 2/2

――それで……もしよかったらなんすけど。お二人にもてんちょーと会ってほしいなって……思ったりしてまして。だめっすかね


 そのチェシャちゃんのお願いに、俺とシロちゃんは了承した。

 もとより、チェシャちゃんへの恩返しのつもりで動いているのだから当然で、その店長さんをまじえて対策を考えるほうがいいと考えたからだ。

 

 まぁ、最初に思ってたみたいに、男の人だったら……裏垢女子友達ですなんて名乗るのはさすがに言い出しづらいのだけど。(女の人だとしても言いづらいよね)

 そうでないことがわかった今、断る理由はなかった。


「じゃあ、今日はもう遅いっすから、明日とかどうっすか?」

「あ、ごめんチェシャちゃん、あしたちょっとわたしが用事はいってるんだ」

「じゃあまた、てんちょーの予定も聞いたうえで、また日程はLINEするっすよー」


 この機会に、チェシャちゃんとは有栖端末のLINEを交換した。

 たった、そんなことなのになんだか彼女はうれしそうで、それが俺にとっても嬉しかったりした。


「あ、じゃあ私グループつくっとくね!」

「うさちゃんセンパイありがとっす。あ、わがままついでに……甘いものも注文していい?」

「……まだ食べれるんだね。でも、わたしもなにかたべよーかな」


大盛のパスタのあとなんだけど。

チェシャちゃんの胸にはこうやって栄養が蓄えられてたんだなぁと、思いつつ、3人分のケーキを追加オーダーした。


 依然としてTwilight界隈は荒れていて、いたずらに新規のユーザー数は増え続けているし、比例するように非礼な輩も増えていて。

 知り合いの裏垢の子もつぎつぎに鍵垢になっていた。


 俺も鍵まではかけていないが、公開画像の一部を非公開にしたり、一部のいかがわしいDMを送ってくるユーザーへのブロックなど、処理に追われている状態だった。


 シロちゃんは、少し前から鍵垢にしてほとんど表向きの活動を凍結していたため、そこまでの影響はないようだけど……。

 

 早いうちにチェシャちゃんに成りすました子を探さないとね……アカウントのっとりならネット経由だけど、そんなに簡単にできるものなのだろうか。


 もしかしたら、直接スマホを触って? 

 でも、そのとき店長さんが預ってたはずだし……。

 そのときの状況も含めて、実際に店長さんと会って話すほうがいいのかもしれない。


「んーーこのミルクレープおいしー」


(あ、なんか真面目に考えるのは後回しでいいや)


 チェシャちゃんの幸せそうな顔を見て、(若干呆れつつ)そう思った。

 同じことを思っていたのかもしれない、少しだけ苦笑いをしてるシロちゃんと目があった。

 そしてその目線はわたしの机のうえにおいたスマホに誘導される。

 

 なんだろう?

 スマホを開くと、シロちゃんからのメッセージだった。


<用事って……? 浮気しない?>


 あ、言ってなかった。


(榊と市河との予定なんだけどね、ときどきはちゃんと男子学生しとかないと)

 

『男子会だから、だいじょうぶだよ』

<えー、でも有栖ちゃん。男のひとにもモテるんだから、わかんないしー……? >

『……想像したら、せっかくのフォンダンショコラがまずくなるからやめよ?』

<爆笑! 市河くんと榊くんでしょ? 楽しんできてねー私はお留守番……(´・ω・`)>


 なんか恋人同士っぽい感じで、嫌じゃないなって思う。


『そこ、ふたりだけでいちゃいちゃするのだめっすよ! 私もまぜてほしーっす』


 シロちゃんが立ち上げたばかりのグループに、チェシャちゃんからのメッセージが入る。そこからは3人で、ひとつのテーブルに座っているのに黙々とスマホでやりとりをしていた。

 そういうのもなんか、嫌じゃないなって思った。

 

(むしろ、気がした)


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る