第13話 遠足が普通じゃない!
娘と嫁が学校に通い始めて約一カ月。
帰って来た娘達がやけに嬉しそうなので聞いてみると明日は遠足らしい。
5月に相応しいイベントだ、山菜学習という名目のお散歩らしいが歩くのが嫌いな俺からしたら何が楽しいのかさっぱりだ。
「パパは遠足行かないの?」
「行かないよ。お仕事もあるし、快の面倒も見ないとだからね」
「そっか...パパは来ないんだ...」
あからさまにがっかりする由衣の表情に胸の奥が締め付けられる。
そんな顔するなよ...もとはといえば嫁が教師になんかならなければ...。
俺の会社での立ち位置は、副社長的なポジションだ、嫁がもちろん社長な訳だが...今まで嫁に来ていた承認待ちの書類が俺に任されたのだ。バイト感覚で教師なんて...そんな嫁が嫌いなわけじゃない、それにこの業務が楽しくない訳でも無い、新たなイベントの企画、コラボの計画、アニメ化に映画化、別の機器でのゲーム化、グラフィックの強化案などなど...日々様々な企画書が俺の元にデータとして送られてくる。
今までは、嫁が尋常ならざる速度で処理していったが、今は人の手...つまりは俺の手で一つ一つ採用か不採用かを判断している。
そんなわけで、俺は毎日忙しいのだ...。
娘達には謝罪とお菓子を与え俺は仕事に戻り娘たちは遠足だ。
そんな俺でもしっかりと娘たちは見守っている、守り神さんは特殊な神通力が使えるのだ。神達の中ではメジャーだと言うその神通力は千里眼と言うらしい。それを水晶に映し出してくれるのだ。なので、俺は見たい時に娘たちの事を見ている。
それ以外にも娘達が学校に行っている間は俺の仕事の手伝いや、快の子守りなど色々して貰っている。
仕事中クスクスと横で守り神さんが笑うので水晶を覗いて見ると巨大な熊に載り満面の笑みを浮かべる子供達の姿が映し出される。
熊には首輪の様なものがされており、首から伝う紐は嫁が握っている...。
俺は驚きのあまり水晶を覗き込む。
子供達は皆笑っている、それどころか野口先生ですら楽しそうに眺めている。
何が何だか分からず仕事どころではない...。
水晶の中の嫁を呆れた表情で眺めていると水晶の中の嫁が見ているのを気付いたかの様にこちらに視線を向け笑顔で楽しそうに手を振りそれからVサインを作った。
たしかに...普段戯れる事が確実に出来ない、熊と触れ合える体験は貴重だ...ただ...これ、世間に知れたら事だぞ...。つくづく田舎に越してきて良かったと思う瞬間だった。
熊と触れ合える遠足かぁ...どう考えても...普通じゃないよなぁ...
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