第31話 市場散策

翌朝、俺たちはアレックスさんに市場が開かれていると教えてもらった通りの場所へと向かっていた。


「先輩、こっちっすよ!」


「わかったわかった」


広場へ到着すると、規模はまちまちだがいくつか出店があるが、辺りは買い物客でにぎわっていた。


「おー、こんな感じなんすね。食べ物とか以外にも雑貨とか色々売ってますね」


「おう、さっそく見て回ろうぜ」


「なんか食べますか?」


「食い意地はってんなぁ……んじゃなんか適当に頼むわ」


「はいっす!行ってきます!戻りましたはいどうぞ!!」


「おうありがとよ。いや戻んのはえーなオイ」


「それで、先輩はなんか買いたいものとかあるんすか?」


「まぁ色々な」


「はぁ、色々っすか」


「おう。あっ、すいません、ちょっとこれ見てもいいですか」


そう言って色々と売り物を見て回っていた中で、俺はある商品の前で足を止めた。


「ああ、構わないよ」


「これって服で合ってますよね?」


「そうだよ。お兄さん変な事訊くね」


「いや、最近この辺りに来たばっかなもんですから。この服って、店主さんが作ったんですか?」


「まさか、ここを通る商隊から仕入れたやつだよ。だから結構いい品質だろう?」


「そうなんですか!どうりで手触りが違うと思いましたよ~。結構高いんじゃないですか?」


「まぁな。店を構えてるような所の高級品とまではいかないけどね、お兄さん気に入ったなら買ってきなよ」


「すいません、欲しいは欲しいんですけど、さっきここに来たばっかりって言ったじゃないですか。ここに来るまでに魔物に襲われたりして荷物失くなっちゃって大変だったんですよ。またお金貯まったら買いに来ます」


「まぁ、そりゃあ……大変だったな。また余裕ができたら寄ってくれよ」


「ありがとうございます」


そう言うと、俺たちはその場を離れて店巡りに戻った。


「買わなくてよかったんすか?」


「買えなくはなかったけど、アレ結構高かったぞ。今の懐事情だとまだちょっと保留だわ」


「服もボロボロになる前に新しいの買わなきゃっすね」


「それにしても、あの服が『結構いい』服なんだな」


「なんか割と素朴な感じだったっすね」


「別に悪く言うつもりもないんだがな。まぁ比べる先が現代世界だからアレだけども」


「それはそうっすね」


「でも服の質が低いってのは俺としては助かるけどな」


「うん?なんでっすか?」


「なんでもクソも、服の原料は植物か動物か石油だろ」


「ん?ああ!植物!綿っすね!」


「石油はともかく、植物ならなんとかなるかもしれんだろ。この辺に綿が生えてるのかは知らんけどな。」


「夢が広がりますね!まぁ農場ないっすけど!!」


「そうなんだよなぁ……。なんにせよまずは元手だな。綿の話も、まだあくまで可能性の話だしな。まずは日銭だ」


「世知辛い話っすねぇ……」


「他にも色々見て回ろうぜ」


「はいっす!」

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