後輩よ、なんでお前も異世界に？

第26話 勇者スキル

「それで？善良で友好的な木こりを亡き者にした成果はあったか？」

「先輩言い方！えーとっすね～～～…はあっ？………」

「おいなんだよ早く言えよ」

「えー……とですね……」

「なんだよ言いたくなきゃ別にいいけど」

「え～……アタシは勇者行為が出来るようになりました」

「うん？勇者だろ」

「いや……そのですね……そのへんの家に入ってタンス漁ったり城の宝物庫から勝手に持ち去ったり出来るようになりました」

「コソ泥じゃん」

「これは勇者行為っす。先輩が教えてくれたんすよ」

「いやコソ泥だって。勇者じゃなくて盗賊でしょ」

「……勇者っす」

「ホラちょっと答えるまでに間が空いたじゃん」

「勇者っす！」

「コソ泥でしょ」

「んもうっ！なんなんすか勇者行為って！せめて隠密とか気配遮断とか言い方あるじゃないっすか」

「ようやくお前も変なスキル生えてきて俺の『高み』まで登ってきたようだな」

「そんな高みに登った覚えはないんすけど？」

「まぁまぁ、いいじゃないか強盗し放題の勇者さん」

「はぁ～～犯罪許可証なんかどこで発行してんすかね、さっさと返納したいんですけど」

「まぁまぁ、いいじゃないか。手始めにどこかの城の宝物庫に忍び込もうぜ」

「いやっすよ！」

「でも本当に窃盗したい放題なのか試してみたいじゃん」

「いや試してみたくないっす」

「本当かぁ？」

「……本当っす」

「だからちょっと間が空くんだよな、ちょっと心動いてんじゃん正直になれよ」

「民家のタンス漁りは抵抗ありますけど、城の宝物庫は正直ちょっとだけ興味あるっす」

「だよな。ロマンだしな宝物庫」

「ロマンっす」

「問題は忍び込むような城がないって事くらいだ」

「根本的な問題ですけど」

「いつかお前の勇者行為スキルが活躍するときが来ると良いな」

「いや当分そんなときは来ないで欲しいんすけど」