第17話 帰路

「先輩、おはようございます」


「おう」


「今日はもう帰るんすか?」


「まぁそうなるな。とりあえずやりたいことは終わったし」


「そっすね」


「じゃあ帰ろうぜ」


「はいっす。あ、そういえば、収穫した薬草って街に着く前に袋かなんかに詰めかえるんです?」


「そうしようぜ。俺まだ人前で変な小屋を召喚する心の準備できてねーわ」


「良いじゃないっすか減るもんじゃないですし」


「やだよ。だって恥ずかしいだろ」


「そんなもんすかねー」


「俺たちが出来ることがこの世界でも当たり前なら良いけどよ、どこにトラブルの種があるか分からんからな。当分の間、何ができるか公開しない方向で行こうぜ。変なスキル使って異端とか犯罪者扱いされたら目も当てられん」


「了解っす。まぁ先輩の農民スキルちょっとキモイっすからね」


「キモイって言うなよ傷つくだろうが」


「体から変な汁を出すスキルとかキモイですよ」


「ただの水だろ変な汁とか言うなっての……。俺だって望んで体から変な汁を出すスキルを習得したわけじゃねーんだよ」


「そうでした。はやくジュースとか出せるようになってくださいね」


「まぁそうなったらもう流石に変な汁扱いされても反論できんな」


「そのうち土とか肥料とか出てくるようになるかもしれないっすね」


「オイオイ、そんなどっかの宗教の始祖じゃねーんだか……ら……よ……」


「……土とか肥料とか出てくるようになってません?」


「朝倉、お前今日は冴えてるな。土とか出せるか知らんけど、またなんか怪しげなスキルが生えてきたわ」


「へー、ちなみになんすか」


「土いじりらしい」


「へー、あ、もうしばらくしたら街に着きそうっすよ」


「なぁなんでいきなりスルーしてくんの?寂しいだろうがオイ」


「土いじり……先輩、ただの土を黄金に変えられたりしますか?」


「オイオイ、そんな事流石に……出来たわ」


「いや出来てないですよ」


「ごめんちょっと盛ったわ」


「流石にちょっと盛りすぎっすね先輩にはがっかりです」


「いや農民はふつう土塊を黄金に変えたりしないんでがっかりされても困るんだが?」


「そうなんすか?」


「そうなんだよなんでちょっと疑問形なんだよ俺がおかしいのかと一瞬思っただろ」


「ホントに出来ないんすか?」


「んー……正直わからん。その辺は水やりと同じだな。もしかしたらレベル上がったらもっと変な事出来るのかもしれん」


「じゃあしょうがないっすね」


「ああ、とりあえず黄金を大量に生み出して異世界経済を混乱させる計画は保留だな」


「いや保留も何も初耳っすけど?」


「あ、そろそろ本当に街だな。人気のない場所で薬草を詰め替えるぞ」


「了解っす。いや何でいまサラッと無から邪悪な計画生えてきたんすか?」


「うーん今回の薬草は結構量があるけど、とりあえず次に植える分残して納品してから反応みるかな」


「ちょっと先輩なんでスルーするんすか」


「よし、詰め替え終わったな。じゃあ冒険者ギルドに向かうぞー」


「ちょっと先輩おいてかないでくださいよ」

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