第12話 最寄りの街

「いやー先輩、最寄りの街、けっこう近かったっすね」


「大分良い線いってたな俺らの迷子」


「おーい、お前ら、何してるんだ?早くこいよ」


「はいっす!」


「ここが冒険者ギルドな。お嬢ちゃんたちは冒険者登録して、回収した魔石とかを換金するといい。良い金額になると思うぞ」


「了解っす」


「それと、これ。冒険者の登録料だ」


「貰っていいんすか?助かるっす!」


「いや、むしろ助けてもらったのは俺たちの方さ。魔石の代金が入るまで文無しなんだろ?使ってくれ」


「アレックスさん、ありがとうございます」


「俺たちも自分の用事を済ましたりして、この辺にいるから、困ったら声かけてくれよ。」


「分かりました」


「それじゃあな、お嬢ちゃんたち」


「はいっす!」


「アレックスさん、ありがとうございました」


そう言うと、俺たちはまた二人になった。


「先輩、じゃあさっそく冒険者登録とやらしに行きましょうよ」


「めちゃ乗り気じゃん……いいけど」


「すいませーん、登録したいんすけど」


朝倉がそう言うと、受付の担当者が応対してくれた。


「冒険者登録ですね。登録料はお持ちでしょうか」


「はいっす!二人分お願いします!」


「はい、確かに頂きました。ではこちらの水晶へ手をかざしてください」


「はいっす!」


「はい」


「ありがとうございます。では後ほど冒険者証を発行させていただきます。他に御用はありますでしょうか」


「この魔石を換金したいのですが」


「承知しました。では査定しますので、しばらくお待ちください」


そういうと、受付の係はカウンターの奥へと去っていった。


「はい」


「いやー先輩、いくらになるか楽しみっすね!」


「アレックスさんたちによると、普通にしてたら三ヶ月分の金くらいにはなるらしいぞ。えーと、約六十万ギルくらいとか言ってたかな」


「無一文から大きな前進っすね!」


「まぁあの人たちが嘘ついてなければだけどな……」


「あー……、まぁあの人たちなら多分大丈夫っすよ」


「俺もそう思うけどな。だって普通にまだあっちにいるし」


「ちなみに先輩は三ヶ月分の生活費を手に入れて、最初に何するんすか?」


「とりあえずギャンブルかな」


「えっ……」


「冗談だよ。風呂入りたいわ」


「なんか冗談に聞こえなかったんですけど」


「まずは生活基盤だな。ギャンブルはその後だよ」


「なんでさらっとギャンブルする前提なんですか」


「冗談はともかく、とりあえず生活の糧をどうやって得るかな。果物とか売るか?」


「休んでからゆっくり考えましょうよ。さっき先輩がお風呂の事話してたから、アタシもちょっとゆっくりしたくなってきたっす」


そんな事を話していたら、受付の係が戻ってきた。


「お待たせしました。お二人の冒険者証になります。こちらの魔石につきましては、品質が良かったので、全部で七十万ギルで買取させていただきたいのですが、いかがでしょうか」


「それでお願いします」


「承知しました。いくらか冒険者ギルドへ預金なさいますか?」


「じゃあニ十万ギルを即金で。残りを預金で」


「承知しました。ご利用ありがとうございます」


「こちらこそ、ありがとうございます」


支払いを受け、俺たちはカウンターを離れた。帰ろうかと思っていたら、その辺にいたアレックスさんと目が合った。


「おーい、お嬢ちゃんたち、登録終わったか?」


「はいっす!」


「おかげさまで、無事終わりました。魔石も見込み額より高く売れましたよ。ありがとうございます」


「そいつはよかった。これでお嬢ちゃんたちは晴れて無一文脱出だな。同じ冒険者同士、これからもよろしくな」


「はいっす」


「こちらこそよろしくお願いします」


「そういえば、お前らは泊まれるところを探してたな。ここを出て左にしばらく行ったところに、赤い屋根の宿屋がある。しわくちゃのババァがやってるんだが、よかったらそこに泊まりな。俺の紹介だとでも言っといてくれ」


「何から何まで、ありがとうございます」


「いいってことよ。何かあったら俺らを頼れよ。つっても、街の外にいるときの戦闘では俺らが頼る側になるかも知れねぇけどな!」


「またよろしくっす、アレックスさん!」


「ああ、じゃあな!」


そうして、俺たちは冒険者ギルドを後にした。

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