馬子にも衣装(君の知らない物語)

華やかな服装は似合わないとこれまでの人生、節目節目で感じてきた。

だから、成人式や発表会という場は極力避けて歩んできた。


しかし、友人の結婚式は避けられない。


たとえどんなにヒラヒラのドレスのような服を着たくないとしても、場にそぐわない格好をして大事な式の違和感となるわけにはいかない。


大人として受け入れるしかない、そう覚悟を決めてどうにでもなれ!とドレス屋で何着か控えめなドレスを掴み、試着室に入った。


するとまあ、ヒラヒラ達に阻まれて着るのも難しい。どうしたもんかと思いつつも、破ってしまってはどうしようもないので細心の注意を払って、体を覆い袖を通す。


腕をあらゆる方向に捻り、やっとファスナーを上げ自分の姿を確認した頃には恐らく、一般よりも長い時間が経っていたのだろう。

試着室のカーテンを開けた先には、付き添ってくれていた友人も店の人も心配そうな顔で立っていた。それでもわたしは構わず言ってしまった。


「なんか似合っている気がする!!」

と。


それほど驚いていた。

自分で自分にいう言葉ではないとは思うが、馬子にも衣装が脳内に浮かんだ。

普段わたしは身なりをあまり気にしていない。自分にはこれが似合うのだろう、と思ったものを長年着続けている。

もしかしたらそれは自分の可能性を自分で潰してしまっているのかもしれない。


自惚れるのもいい加減に……と言いたいところだが、今日は大目に見ることにする。

即購入し、家に帰ってまた袖を通すその時間は本当に豊かなものだったから。


そんな今日の1曲。

supercellで『君の知らない物語』


言わないとわからないこと、やってみないとわからないこと……。難しいものですね。

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