第1話 男の旅立ち
初めに3つのダンジョンがありました。その後世界にダンジョンが拡がっていきました。
そしてついにダンジョンが決壊しモンスターがあふれ出した時、人々は世界の終わりを知りました。
――― ダンジョンの書より
「レイ!」
洗礼の儀式が終わり、東京から【ゲート】を使って『ホーム』へもどると、『ホーム』の冒険者協会で父さんが待っていてくれた。
「・・・・・・父さん・・・」
「おかえり、レイ。何も言うな。」
冒険者協会にある【ゲート】の間には、儀式に参加した子供を迎えに来た大人たちがたくさんいて、子供たちから貰った【スキル】を聞かされて嬉しそうだ。
「レイちゃん!」
アカネちゃんが声をかけてくれたけど、おじさんになにか言われて口を閉ざしてしまった。
僕は、アカネちゃんの辛そうな顔をみたくなかった・・・
「父さん、いこ・・・」
みんなの前で泣いたら負けだと分かっていたので、父さんの残った方の手を引いて冒険者協会から出た。
「・・・ヒック・・・ウッウ・・・」
声を殺して泣きながら歩く僕の頭を、父さんの大きくてゴツイ手で撫でてくれた。かたいマメだらけでゴツゴツした戦う男の手、大好きな父さんの手だった・・・
・
・
・
「そうか、レイ。辛い思いをさせたな。」
黙ったまま父さんと夕食をすませ、食器を片ずけると、洗礼の儀式で起こったことを父さんに全て話した。僕の惨めな気持ちも、なにもかも・・・
父さんは、僕が話している間中、ずっと黙って聞いてくれた。
「レイ。お前に【スキル】が無いと分かった以上、お前には2つしか道は無い。
まだ小さなお前にこんな話はしたくなかったんだがな。だが、これが父さんたちが暮らす現実なんだ。」
父さんは、今まで見たこともない厳しい顔で、ゆっくりと話した。
「先ず、ここで暮らす人々の1番根っこのルール、『ホームの役に立たない人間は、ホームにいてはならない』だ。
これはレイも知ってるな?」
僕はだまってうなずいた。
「だから、僕は父さんみたいな冒険者になりたかったんだ。『ホーム』のみんなの役に立ちたかったんだよ、父さん・・・」
「そうだな。だが、【スキル】がないと『ホーム』の役には立てない。
役に立たない者は、町から出ていき『流れ者』になるしかない。
これが1つ目の道だ。」
「そんなぁ、父さん。僕父さんと別れたくないよ!」
また、涙があふれそうになる・・・
「ああ、もちろん父さんだってそうだ!もし、レイがこの道を選ぶなら、父さんもいっしょにこの『ホーム』をでる。」
「うっうううっ」
父さんの言葉に、涙がボロボロこぼれた・・・
「そして、もう1つの道は、冒険者になる道だ。」
「だがら、どうさん!ぼ、ぼぐにはっ【ズギル】がないっで・・・」
「【スキル】がなくてもモンスターに勝てるだけの強さがあればいいんだ。レイ。
だが、レイ。この道はとても険しくて長い道になるだろう。もしかしたら、途中で死んでしまうかもしれない。
でも、もしレイがこの道を選ぶなら、父さんはこの【剣豪】の名にかけて、父さんの全ての技を教えてやる!生き残れるかどうかは、レイのガンバり次第だ!
どうする、レイ?」
父さんは僕の肩をつかんで、これ以上もなく真剣な目で僕を見て、そして答えをたずねた。
「僕は・・・」
・
・
・
コン・・・・・・コン・・・・・・
「アカネちゃん」
コン・・・
「だれ?レイちゃん?」
アカネちゃんのウチの木によじ登って、アカネちゃんを呼び出した。
窓ガラス割れなくて良かったよ〜
「そうだよ、レイだよ!」
「どうしたの、こんな夜に?」
パジャマを着て、キレイな髪を三つ編みにあんでいる、可愛いアカネちゃん。
僕は可愛いアカネちゃんの姿を目に焼き付けるためにじっと見つめた・・・
「どうしたの、レイちゃん。なんか変だよ。ウチにはいる?」
「・・・アカネちゃん、僕お別れに来たんだ。今晩父さんとこの『ホーム』を出る。」
「どうしてなの?『ホーム』の外はモンスターがいてあぶないよ!だめ!いっちゃだめっ!」
「【スキル】をもってない僕は『ホーム』に住めないのしってた?」
「うん、さっきパパから聞いちゃったの」
「だから僕は決めたんだ、【スキル】なしでモンスターを倒せるくらいにつよくなって、そして必ずアカネちゃんのとこに戻ってくるって!アカネちゃんを守るため・・・約束だから」
「や!や!そんなのいやー!【スキル】がなくたってアカネちゃんが、レイちゃんをまもってあけるから。レイちゃん、何もしてなくてもいいから!アカネちゃんかレイちゃんの分も働くから、ぜったい行かないで!アカネをアカネを1人にしないでぇ・・・」
アカネちゃんの大きな瞳にからボロボロ涙があふれだした。アカネちゃんが悲しむと僕の心がイタイ・・・・・・
「アカネちゃん、帰ってくる!必ずアカネちゃんのとこへ強くなって帰ってくるよ!ぜったい!ぜつたい!
そしたら、二度とアカネちゃんを1人にしないから、僕がアカネちゃんをまもる!一生守るって約束する!」
「じゃ、約束!」
アカネちゃんは俺を窓辺に引き寄せて、静かにいった。枝から落ちそうで怖い。
「いって、約束。ここでもう一度いって!」
僕はアカネちゃんの可愛らしい両の手を、太ってむくんだ僕の手で握りしめながら言った。
「僕はこれから強くなります!モンスターに負けないくらい強くなってアカネちゃんのとこに必ず戻ってきます!
そして僕は、その後一生アカネちゃんをまもります!
これが、僕のやくそくです!」
「アカネはずぅ――――っとレイちゃんを待ちます。レイちゃんが帰ってきたら、アカネはレイちゃんのお嫁さんになって、一生レイちゃんのそばにいます!
これが私の約束です!」
約束の交換がおわったとき、アカネちゃんがそっとほっぺにキスしてくれた。
それから、『私を忘れないで』といって、紅色に光るアカネちゃんの髪をひと房切って僕に手渡してくれた。
これでもう思い残すことはない。
アカネちゃんを思うと胸がいたいけど、あれ?結婚だって??いや、ナンかの言い間違いでしょう。だって僕らまだ5歳だし・・・。
月明かりに照らされた窓に立つアカネちゃんが、ハッキリみえる。
別れの言葉は言わない。もうお互いの思いを話したから。
父さんと僕は、それぞれ身の丈に合わない大きな冒険者バッグを背負って、街灯の影に消えていった。
◇◇◇
アカネはレイが見えなくなるまで見送ってからベッドにダイブして、大声で泣き続けた!
『ホーム』の外で生きることが、どんなに厳しいことか、さっき父親から聞かされた。
アカネは、巻き毛が可愛いらしい男の子の鍛錬の無事と1日も早い再会を強く願って、大声で泣きつづけた。
◇◇◇
『ホーム』を出た父さんと僕が最初に向かった先は、母さんのお墓だった。
「母さんは、レイを産んでから半年くらい経ってから天国へ行ったんだ。」
僕には、母さんの記憶が全然ない。ただ、あったかくて、やわらかくて、とても満ち足りてたのをおぼろげながら覚えてる・・・
『母さん、これから俺の剣技の全てをレイに伝授しに行くよ。どれくらい時間がかかるか分からんし、レイの心が折れてしまわないか・・・自信が無い。
でも、どうか俺たちのレイを見守ってくれ。』
『母さん、僕行きます。いって修行して立派な冒険者になります。父さんみたいな。そしたら帰ってきます!待っててください。母さん!』
親子が去った墓には、美味しそうなおにぎりが 2つ並んで置いてあった。
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