ダンジョン部物語 〜 デブの上にスキル無しで虐められてた俺が、山にこもって10年間毎日一万回刀を振り続けたら、冒険者育成高校で成り上がってバカにした奴らを見返してやる!
ろにい
入学編
プロローグ 洗礼の儀式
そこそこ平和だった世界に、突然ダンジョンが現れたのはもうだいぶ昔、お父さんのお爺さんよりも前のことだったそうです。
そして西暦の時代は終わり、ダンジョンの時代が始まりました。
――― ダンジョンの書より
「6月に5歳になった子供はここに並んでください。まもなく司祭さまが来ます。」
5歳になる全ての子供たちは、全員ここ東京にある『洗礼のダンジョン』で洗礼の儀式を行って、それぞれの【スキル】を神様から授かるんだって父さんが教えてくれた。
もちろん僕、
「レイちゃん・・・人がいっぱいいて、アカネちゃん怖いの・・・」
僕の袖をクイと引っぱっり、目にいっぱい涙をためながら、アカネちゃんは小さく震えている。
「うん、そうだね。人がいっぱいで怖いよね。
でも、もしかしたら他の人も同じかもしれないよ。
だから、怖いのはアカネちゃんだけじゃないからさ。だから、だからね、だいじょうぶ、がんばろ!」
アカネちゃんはコクリとうなずいて、ぼくの左手をにぎった。
僕は太った右手で、優しくアカネちゃんの頭を撫でてあげた。
そうすると、いつもアカネちゃんは目を細めて、気持ちよさそうに笑うんだ。
アカネちゃんは僕の幼なじみで、デブの僕にもとっても優しくて・・・可愛い。だから僕が守ってあげなきゃ!
『人の子よ。これより洗礼の儀式を始める。
この国は、ダンジョンが産み出すダンジョン資源がなければ、灯り1つ付けられないことは小さな君達でもわかるであろう?
ダンジョン資源こそが、人の生活を支えている事を良く心に刻みなさい。
だから人の子よ、より強い【ギフト】を授かり、より己を鍛え、より深くダンジョンを探検し、そしてダンジョンがら億万の宝を持ち帰り、この国の民を豊かにするのです。
では、始めよう。』
司祭様はフードを深く被っているので顔がよく見えないけど、人間じゃないらしい。父さんがそう教えてくれた。
「「おおー!はじまるぞ!」」
「「「今年はどんな強力な【スキル】がでるか!?」」」
神殿脇にある大きな魔力モニターに洗礼の様子が映し出された。たくさんの大人の人が集まって魔力モニターを見ている。
・・・すごく緊張してきたよぉ・・・
ここ上野公園にある『洗礼のダンジョン』は、神殿タイプのダンジョンで、階層は1階層だけしかなくモンスターも出ない特別なダンジョンなんだそうだ。
僕らは順番にゆっくりと神殿の階段を上っていく。僕は太ってるから、階段の上まで来ると息があがってしまった。
そして・・・大きな神殿の門の前で止まる・・・・・・ハアハア
「「「【上級剣士】がでたぞ!」」」
「「今度は【重戦士】だ!」」
「「「おい次は【薬師の知識】だ!」」」
「「今年は当たり年かもしれないぞ!」」
洗礼の儀式を見に来た大人たちの興奮がだんだん上がっていく。
ぼ、僕も強い【スキル】がほしいんだ!
「どうしよぅ、レイちゃん・・・アカネちゃん良い【スキル】もらえなかったら、どうしよぅ!うう、うえーえんえん、うわーん」
僕はアカネちゃんの綺麗な
「だいじょうぶだよ、アカネちゃん。父さんが言ってたよ。どんな【スキル】でも、その人にとっては世界で1つの愛しい【スキル】なんだって。
だからアカネちゃん、どんな【スキル】でもだいじに育てよう!
そしたら【スキル】もきっとアカネちゃんにお返ししてくれるから、ね。
だから、泣かないでアカネちゃん。」
「うん、ありがとうレイちゃん。絶対【スキル】とお友達になって、だいじにだいじに育てるぅ!」
「うん、アカネちゃんはえらいね〜!」
「うん!へへっ」
いい笑顔でアカネちゃんは元気に返事してくれた。
そうするうちに、僕らは神殿の大きな建物の中にはいった。
神殿のなかは大きな部屋がひとつだけで、その真ん中には大人の身の丈よりずっと高い石版があった。
『【偵察の才能】』
「「「【偵察の才能】キター!」」」
石版に触れると、自分の【スキル】が石版に映し出される。それと同じ内容が外のモニターに映し出されてみんなに披露されるんだ。これも全部ダンジョンの力なんだって。
さあ、次はアカネちゃんの番だ!
石版に【スキル】がでるまで、ちょっと時間がかかってる。
『【魔の女皇帝】』
「「「「【魔の女皇帝】!おおおおお!うおおお!帝級スキルだ!」」」」
「「「おいおいおい!10年ぶりの帝級保持者だぞ!」」」
「「これで、きっと暮らしがまた良くなるぞー!」」
すごい騒ぎになった!僕もびっくりして心臓が止まりそう!
「やったぁ!レイちゃんっ!レイちゃんのおかげだよ!こんどは、こんどはレイちゃんの番!がんばって!!」
「うん!」
僕は石版に近ずき、両手をゆっくりと上げて石版にさわった。
すると、石版から熱が伝わってきて、その熱がだんだん熱くなり、手から伝わって身体中にひろがった!全身から汗が流れはじめたよ。ううう・・・
『ダンジョンの神様!どうか強いスキルを授けてください!!』
『【 】』
「「「「・・・・・・・・・!」」」」
「「おい、なんだありゃあ!」」
「「一体何なんだ!アレ!!」」
「「「【能無し】?【能無し】が出たー!」」」
「うわぁーん!あああーん!ど、どうして僕なんだ!僕の、ボクの【スキル】は??うわぁぁぁー!」
僕は、突然やってきた絶望に大声を出して泣いた・・・
『人の子よ、ダンジョンは人が乗り越えられない試練は与えないし、必ずその者の力となるスキルをさずける。』
大声で泣いていた僕に、司祭様は優しく話してくれた。その優しい声を聞いていると、自然に涙がとまった・・・お母さん?
「でも、でも、僕には・・・」
『ダンジョンは、才ある者にしか試練は与えない。だから、信じなさい。自分の可能性を。』
僕はとぼとぼ歩いて神殿をでて、1人階段をおりた・・・
「おい、見ろよ!あれあれ。【能無し】だぜ!」
「うわぁ、俺だったら絶望して死んじゃうな!」
「おい!【能無し】!何の役にも立たないなら、さっさとお前の【ホーム】から出てけ!」
大人のひとがみんな僕を【能無し】だとののしる・・・
「おい!レイ!お前のせいでいっしょ東京にきた俺たちまで変な目で見られたんだぞ!」
「そうだそうだ!あやまれよ、この【能無し】!」
「だいたい、デブでノロマなお前が、アカネちゃんといっしょにいるのがおかしいんだ!」
「そうた!デブで【能無し】のお前は、2度とアカネちゃんに近寄るな!」
「こいつ!手をついて俺たちにあやまれ!こうしてやる、デブ!」
いっしょに東京にきた男の子たちに囲まれてののしられた。そのうえ1番力の強いツトムくんが、僕をけっとばしてころがした。
ドカッ!ドン!ドン!ドカッ・・・
なんどもなんども体中けられた・・・
僕はいつもみたいに小さくうずくまって体をまもり、暴力が収まるのをじっとまった。
女の子たちも周りで僕のこと【能無し】ってののしっているよ・・・体がいたいのより、心がいたいよ・・・かあさん・・・
「やめなさい!レイちゃんをいじめないで!」
アカネ色の髪を真っ赤に燃え上がらせてアカネちゃんがとんできた。
「アカネちゃん・・・」
「おい、アカネ!こんなデブで【能無し】のかたをもつのか!」
「そうよ、アカネちゃん!せっかくの帝級【スキル】がくさっちゃうって、さっき大人の人が言ってたよ。」
その時だった。派手なシャツにサングラスをかけた大人2人が周りの子供たちを突きとばしてやってきた。
「どけ!ガキ!」
「きゃっ!」「うわっ、いてー!」
「アニキ、この子だ!」
「よし、早く捕まえて行くぞ!」
「イヤー!はなしてー!」
「アカネちゃん!」
アカネちゃんをつかまえて、逃げようとする男の足にしがみついた!
「「「キャー!」」」
子供たちがあわてて逃げだした!
「くそ!このガキ、離せ!」
「う゛!」
もう1人の男が、僕を蹴りつけてくる。
「いやだ、はなさない!アカネちゃんを返せ!」
ドシドシドシ!
なんどもたんども身体中なぐられて、蹴られた。口の中から血の味がする。
「かえせ!アカネちゃんをかえせ!」
「この糞ガキ!殺してやる!」
そう言って男はナイフを取り出した!
「レイちゃーん!」
僕はそこで気を失った。
アカネちゃんの髪が炎のように燃え上がったのが見えた気がしたけど・・・
・
・
・
イタイ、イタイ、イタイ、身体が、イタイ、イタイ、イタイ、心が、イタイ、イタイ、いたいよ・・・かあさん・・・
【ヒール】
波のように、痛みが引いていった。
目を開けると・・・
「レイちゃん!良かった!良かったよー!うわああーん!」
僕を抱きしめてたアカネちゃんが、大声で泣き出した。
アカネちゃん、泣かないで・・・
*************
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