血の通った、白
まがつ
回想、もしくは懺悔
私はただ、遠くから見ているだけでいいのだ。といっても、あんまり遠くてはいけない。しかして気付かれるわけにもいかない。丁度よい距離感で、私は彼を見る。
図書館によく来ている彼は、あまり外へ出かけるのが好きではないのだろう、肌がとても白かった。彼の血の通っている白、私はそれを見るのが好きだ。この間、偶然にも同じ本を手に取ろうとして、手の甲に浮かぶ細い骨と青い血管が目についた。私はただごめんなさい、と口にしただけであったのだが、彼の白に、黒髪によって強調される白に思考が支配されてしまって、せっかく譲ってもらった本を一ページも読まないまま、本棚に戻してしまった。ああそうだ。恋といって差し支えないほどに、私は彼の真っ白な肌に魅せられてしまったのだ。
以降私は、彼の姿を見るために、図書館に通い詰めることとなった。外はあたたかくなって、日焼け止めを塗らなければすぐに日焼けをしてしまう。そんな私の肌と比較すると、彼のなんと白いことか。まるで彼の周りのみが冬のようであった。彼はモノトーンの服をよく着ていたから、余計にそう思うのかもしれない。雲一つない空の下で自転車を止める彼の、損なわれることを知らない白は、とても神聖なもののように見えて仕方ない。
その白は、どのようにして維持されているのだろう。その肌には何が塗られているのだろう。興味は尽きなかったが、その疑問をただちに解決するのでは面白くない。あの肌の下には、私と同じ真っ赤な血液が、肉がある。その事実を夢想することは、神を穢しているようで、背徳的な気分にさせられるのだ。
もう少しだけ。あと少しの間だけ、神聖な、美麗な、鮮烈な白を視姦して楽しもうと思う。
血の通った、白 まがつ @magatsuD
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