35.支援役ロベル 大空を舞う



「決戦のときだ! 行くぞみんな! いざ、天空の魔王城へ!」



「「「オーーーーーッ!」」」



みんな気合は十分だ! たのもしいな!



「まずはモンスターの召喚だな。コール、ドラゴン・タイラント! コール、フェニックス!」



俺の号令で。




「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」



「クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」




暴君龍と不死鳥が出現した。



「次は支援スキルだな」



よし! 一気に使うぞ!




「『超高速詠唱』で、スキル使用スピードアップ!」



からの。



「『オーバー・ロール』で、支援スキルの効果をパーティー全体へ!」



からの。



「『フレイム・ウイングス』で、炎属性攻撃威力を超上昇!」



もう1回。



「『フレイム・ウイングス』で、炎属性攻撃威力を超上昇!」



からの。



「『セイント・バラード』で、神聖属性攻撃威力を超上昇!」



もう1回。



「『セイント・バラード』で、神聖属性攻撃威力を超上昇!」



からの。



「『グレート・スプレッド』で、攻撃範囲を超拡大!」



からの。



「『ワイドサイト・アイ』で、視力を大幅強化!」



からの。



「『シャイニング・アーマー』で、超防御力上昇!」



からの。



「『アデプト・アヴォイド』で、回避力急上昇!」



からの。



「『ゴッド・スピード』で、超速度上昇!」



からの。



「『ワンブレス・アウェイ』で、攻撃回数増加!」



からの。



「『アーク・ライト』で、全ステータス極大上昇!」




「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」



「クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」




スキルを使うたびに、ドラゴン・タイラントとフェニックスの声に力強さが増す。効果は十分だ!



「最後に変身スキル、『シェイプ・シフト』発動! 変身するモンスターは『ゴールデン・ドラゴン』だ!」




ボンッ!




俺の体が、黄金色の巨大なドラゴンに変身した!



「お兄様すごーーーーい!  おっきくてカッコよくてきれーーーーい! 金色にキラキラ光ってるよ!」



「なんてステキな輝きなのでしょう! 神聖で、気品があって、ゆるぎない気高さも感じます!」



「主様の内面がにじみでてる」



「俺はそんなに立派な人間じゃないさ。そういうモンスターなだけだよ」



翼やしっぽを動かし、具合を確かめてみる。ドラゴンに変身するのは初めてだ。もちろん、空を飛んだ経験なんてない。



だけど。俺には感覚でわかった。



「カンタンだな。どうってことなく飛べそうだ。よし、みんな! 俺の背中に乗ってくれ!」



「オッケー!」



「はい!」



「了解」



みんなが背中に乗ったのを確認し、俺は支援スキルを使う。



「防衛スキル『ドーム・バリアー』発動! 対象は『俺の背中』だ!」



丸天井型のバリアが、みんなをすっぽり包んだ。これで転落の心配はない。



「乗り心地はどうだ?」



「もう最っ高! お兄様の背中、すっごくあったかいよ!」



「これがあなた様のぬくもり……ああ! すごく心がやすらぎます……!」



「いつまでも味わっていたい」



「ははは。お世辞でもうれしいよ! 魔王城に着くまで、少しだけガマンしてくれ!」




「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」



「クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」




俺の左にドラゴン・タイラントが、右にはフェニックスが並ぶ。




「行くぞ! 『支援役」ロベル・モリス! 世界の支援を開始する!」




俺は翼をはためかせ、空へと舞い上がった! 高度はグングン上昇していく! 



「はやーーーい! すっごくはやーーーーーい!」



「この調子なら、魔王城までは一瞬ですね!」



「残念。そうカンタンにはいかないみたい」



「だな。魔王城から空中部隊が飛び出したぞ」



見覚えがあるモンスターだ。



「Sランク・モンスターのグレート・デーモン。何度か『エンカウント操作・インスタント』で呼び出した相手だな。数はざっと6,000体、ってとこか」



うん、護衛をつけて正解だったな。



「ドラゴン・タイラント! フェニックス! 迎撃はまかせた!」



『承知したぞ、ロベル様! この場はわらわ、ドラゴン・タイラントが引き受けるのじゃ! 進路を切り開いてみせようぞ!』



『了解よーん! ここはあたし、フェニックスにお・ま・か・せ! 旦那様はゆーっくり、見物しててくださいね?』



「ああ! 頼んだ……って」



ん? アレ? なんだ?



「召喚モンスターの声が聞こえるぞ? 『シェイプ・シフト』でモンスターに変身したから、モンスター語も理解できるようになった、ってことか?」



『ひとつの要素じゃろうが、それだけではなかろう? フツーの人間がSSSランク・モンスターと話すなど、絶対にムリじゃ! ロベル様じゃからこそ、こうして会話ができるというものじゃよ!』



『そーそー! 旦那様の圧倒的なチカラと魔力のおかげで、あたしたちとおしゃべりできるようになってる、ってこと!』



「う、うーむ。そうなのか? そういうもんなのか?」



というか俺、どうして『様』付けで呼ばれてるんだろ? 『ロベル様』やら『旦那様』やら。みんなのおかげで慣れちゃったけど。



しかも『わらわ』とか、『あたし』とか。



「もしかして、キミたち女の子?」



『その通りじゃ! ちなみにわらわはモンスター界隈では、『タイラーちゃん』と呼ばれるスーパー・スターなんじゃぞ!』



『あたしもオ・ン・ナ・ノ・コ! トップ・オブ・ビューティー・フェニックスの『ニックちゃん』といえば、知らないモンスターはいないぐらいなのよん!』



「そ、そうなのか。そいつはすごいんだろうな……たぶん」



『ついでに言うと、わらわたちは人間の姿にも変身できるんじゃが?』



『あとでお見せしましょうかしらん?』



ふーむ。まったく興味がないといえば、ウソにはなるけども。




「アンリさん、トウナさん。さっきから、何だかイヤな予感がしません?」



「します! ライバルが増えそうな感じが……」



「困る。絶対困る」




なぜか背中の上から、妙なプレッシャーを感じる。



「……やめとくよ。ややこしい話になりそうな気がする。何となく」



『ふむ、そうか? せっかくわらわの『ぷりてぃ☆ぼでぃ』を拝ませてやろうと思ったんじゃが。残念じゃのう」



『あたしの『ないす☆ばでぃ』を見たくなったら、いつでもおっしゃってくださいね! だ・ん・な・さ・ま!」



そうこうしている間に。




「キシャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」




6,000体のグレート・デーモンが、一気に俺たちに突っ込んできた!



「おっと、おしゃべりはここまでだな! ドラゴン・タイ……じゃなかった。タイラーちゃんは灼熱の炎! ニックちゃんは聖なる炎! 一気に蹴散らすんだ!」



『うむ! グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』



『はぁい! クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!』




ゴアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!




支援スキルで超強化された炎が、グレート・デーモン軍団を直撃!




「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォ!?」」




ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!




グレート・デーモン軍団は、1体残らず完全消滅した。



「一撃で全滅か。ふたり? ともさすがだな!」



『当然じゃ。ロベル様からメチャメチャな能力上昇を、事前にもらってるからの。オーバー・キルもいいところじゃよ』



『どんなモンスターでも、旦那様の力をいただければできたと思うわよん?』



そんなバカな。



「どう考えても、タイラーちゃんとニックちゃんだからこそ、だよ!」



『……やれやれじゃ。ホントにロベル様は謙遜がお上手じゃのぅ』



『自己評価が低すぎで、ビックリしちゃうわよねぇ』



「そんなことないって。ぜーんぶ事実だから」



『ま、そういうことにしておこうかの? さて、これで露払いはおしまいじゃ! 城内戦は、ロベル様におまかせでいいんじゃな?』



「ああ。決着は、俺の手でつけるよ」



『かしこまりー! ピンチになったらいつでも呼んでね! 出番は100パーセントないと思うけどー!』



「ありがとうタイラーちゃん! ニックちゃん! よし、このまま突撃だ!」



スピードを上げた俺は、一気に魔王城の城門前に到達した。



「着いたぞ! みんな、降りてくれ!」



「もう少しお兄様の背中、味わってたかったなぁ」



「ちょっぴり、なごり惜しいですけど」



「状況が状況。仕方ない」



みんなが背中から降りたところで。




ボウン!




『シェイプ・シフト』を解除して、人間に戻る。



目の前にそびえ立つのは、巨大な魔王城。



「いよいよ最終決戦、だな」


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