24.支援役ロベル 王国民の歓声を浴びる



「『ワンズ王国』防衛成功! 任務完了だ!」



「やったああああああああああ!」



「やりましたね! あなた様!」



「やったね。ぶい」



笑顔のサミー、アンリ、トウナに。




「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」



「クオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!」




ドラゴン・タイラントとフェニックスも、勝利のおたけびをあげた。



「おかげさまで助かったよ! またよろしくな!」



「グオン!」



「クオッ!」



俺は2体のモンスターを戻すと、3聖女に言う。



「ありがとうサミー! アンリ! トウナ! みんなのおかげで『ワンズ王国』を守れたよ!」



「なーに言ってるの! ぜーんぶお兄様のおかげじゃない! お兄様がレベル上げてくれたり、支援スキル使ってくれたから勝てたんだよ!」



「ええ。あなた様がいなければ、こんなに強大な力は持てませんでした。感謝の言葉もありません」



「英雄は100パーセント主様。主様が完全なる英雄」



「ははは。まったく、3人とも大げさだって――」




ドドドドドドドドドドドドドドドド!




「ん?」



何だ?



「『ワンズ王国』から、ものスゴイ数の人が向かってくるぞ……?」




「ロベル・モリス様だ!」



「英雄様だ!」



「魔物を倒した英雄だ!」



「王国を救った英雄だ!」



「世界の救世主だ!」



「世界を救うお方だ!」



「ロベル様!」



「ロベル様!」




ドドドドドドドドドドドドドドドド!




「な、何だ何だ何だ? もしかしてみんな王国の人?」



……まさか。



「俺に会いに来た? というか、何でみんな俺の名前知ってるの?」



「いやいやお兄様。知ってるに決まってるじゃん」



「ええ。当然知られてますよね」



「知らないはずがない」



「どうして!?」



「だって。『大聖堂』を助けてくれたことで、すっごく有名になってるし」



「わたしを救ってくれた件でも、ウワサが広まってるみたいですし」



「闇組織『影のレンジャー5人衆』もつかまえたとか」



「最後のは俺だってバレてないはず!」



って、そんなこと話してる場合じゃない! 王国の人たちが押し寄せてくる!




「ロベル様!」



「ロベル様!」



「ロベル・モリス様!」




ドドドドドドドドドドドドドドドド!




「ちょ、ちょっと待って! 俺、目立つのは苦手で! 人前に出るのも嫌いで!」




「ロベル様!」



「ロベル様!」



「ロベル様!」




ドドドドドドドドドドドドドドドド!




……ええい仕方がない! 今回だけは開き直るしかない! それっぽく時間制限をつけて、どうにかしてみよう!



「みんな! 俺はこれから5分間! 5分間だけ、彼らの対応をする! 5分経ったら合図してくれ!」



「うん、わかった! さっすがお兄様! ファンサービスだね! やっさしいーーーーー!」



「ステキです! それではわたしたちは、邪魔にならないように隠れてますね!」



「ただし5分はゆずれない。ライバルができると大変」



「ライバル? ライバルって何だ?」



「はーいお兄様! 行ってらっしゃーい!」



サミーに背中をポンと押され、俺は王国民の前に出る。



よし! やればできる! やってやるさ!




「俺がロベル・モリスだ! 『ワンズ王国』防衛を支援できたことは! 俺にとって誇りだ! 今日という日を! 俺は! 生涯忘れることはないだろう!」




ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!




「俺はこれからすぐ! 次の戦いに出なければならない! しかし! 時間は今しばしある! 5分間という限られた中ではあるが! 今この場で! さまざまな対話ができればと思っている! 『ワンズ王国』の応援が! これからの俺の! 大きな力になるのだから!」




ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!




ちょ、ちょっとカッコつけすぎたかな? ともかく、ここからが勝負だぞ!



「すげえ! ホンモノのロベル様だ! どうか握手してください!」



「ああ、そんなことでよければ」



「ロベル様! 今度ぜひウチの料理店に! 最高の食材で作ったパスタが自慢なんです!」



「それはいいことを聞いた。覚えておくよ」



「ロベル様! 我が店自慢のクッキー、ぜひとも召し上がってください!」



「いただきます」



はむはむ。



「うん、確かに超うまい」



「ロベル様! ウチのお店のケーキもどうぞ!」



もぐもぐ。



「うん、超うまい超うまい」



「ロベルさま! ボクもおとなになったら、ロベルさまみたいになるんだ!」



「ありがとう! キミの応援を裏切らないように、これからもがんばるよ!」



「ロベル殿! ぜひとも我が王国騎士団へ! 剣術の指南をお願いしたい!」



「そう言われても我流なんで。レベルの高さでどうにかしてるだけなんで」



「ロベル殿! 私どもの魔法ギルドへ来てくれんかの? 支援スキルの扱い方を伝授いただけんじゃろうか?」



「そう言われても我流なんで。雰囲気で使ってるだけなんで」



「ロベル様! 鉱山で採れた貴重な鉱石をお納めください!」



「俺は間に合ってるから。何か別の役に立てて」



「キャーキャー! ロベル様ー! 私たちロベル様のファンクラブ作ってるんですー!」



「ファ、ファンクラブ?」



マジで? そんなのまであるの?



「ロベル様ー! よろしければサインお願いしますー!」



「サ、サインって何だ? 名前とかそれっぽく書けばいいのかな?」



「キャーーーーーーーーー! 宝物にしますーーーーーーー!」



「あーズルイぃ! ロベル様ぁ! 私にもお願いしますぅ!」



「ダメよ! こっちが先よ!」



「はいはいはーい! あたしにも書いて書いて書いてー!」



「わたしにもお願いします!」



「私もほしい」



「わ、わかったわかった! 順番に書くから押さないで……って」



あれ? 何だか聞き覚えのある声がしたような? 気のせいかな?



「ロベル様! 今度オレの武器屋に!」



「ロベル様! それより私どもの防具屋に!」



「ロベル様! その前に我が道具屋へ!」



「ロベル様! 酒が飲めるようになったらウチの酒場へ!」



「ロベル様! ウチの教育施設で指導を!」



「いいやロベル様! ウチの冒険者ギルドの専属に!」



「ロベル様! どうかうちのアンリちゃんをお嫁さんに!」



「ロベル殿! ワシに変わって国王の座に!」



「ロベル様!」



「ロベル様!」



「ロベル様!」



「ちょちょちょちょいちょいちょい! 落ち着いて落ち着いて! 一気に言われても聞き取れないから! ひとりずつ順番に!」



押し寄せてくる人たちを、次から次へとさばいているうちに。



「はーいお兄様! 5分経過ー!」



「トウナ様、お願いいたします!」



「了解。ルナライト・プリズムフラッシュ」




パアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!





トウナの神聖魔法で、あたりが光に包まれた。



「うおっ何だ!?」



「まぶしっ!?」



「でもあったかい光!」



このスキに、俺は人々の包囲網を脱出した。



「よ、よし! この場をはなれよう! 『ゴッド・スピード』! 『ゴッド・スピード』を使う! パーティー全員に使う!」



超速度を手に入れた俺は、ダッシュで去ろうとしたが。



「……最後にあいさつだけしとこうかな」



まばゆい光の中で、俺は声を張り上げる。




「今日は本当にありがとう! これから俺は次の戦いに向かう! だが! もしも! また『ワンズ王国』に危機が訪れるなら! 俺はふたたび! 支援に駆けつけるだろう! いつでも俺を呼んでくれ! それではさらばだ! 『ワンズ王国』に栄光あれ!」




それだけ言い残し。俺は3聖女といっしょに、超速で『ワンズ王国』を走り去る。



背後からは。




ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!




大きな大きな歓声が上がっていた。




「ふぅ、やれやれだ。俺らしくないこと、しちゃったな」



「ううん! すっごくカッコよかったよ! やっぱりお兄様は、誰からも認められるスターだね!」



「あなた様が次に『ワンズ王国』を訪れるときは、大変な騒ぎになりそうですね? クスッ」



「……そこまで考えてなかった」



「王様就任かも」



「ないない。さすがにそれはない」




しかし。それにしても。



「魔族の本格的な侵攻、か」



頭の中に、大陸の伝説がよぎる。




『再び魔王が世界を危機にさらすとき、ひとりの男が立ち上がる。ひとりの男は3人の聖女を伴い、魔王を滅ぼし世界を救う』




3聖女とパーティーを組んでる俺も、当事者意識を持つべきなんだろう。



「探す必要があるな。魔王を滅ぼし世界を救う、その方法を」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る