2.支援役ロベル スキルのチート覚醒で爆速レベルアップする

「はあぁぁ……」



冒険者ギルドを出た俺は、しょんぼりと外まで歩いてきた。トウナからの手紙は、読む気にもならなかった。



「やっぱり、ショックだよなぁ」



俺は、昔から目立つのが嫌いだった。人前に出るのも好きじゃない。性格は用心深く、慎重すぎるほどの慎重派。自分が表に出るよりも、裏方として誰かをサポートする方が好きだった。



だから。



「『支援役』の仕事は天職だって、思ってた」



幸運にも、俺の魔力キャパはずば抜けて多かった。



勇者パーティーでの冒険時も。得意のスキル『超高速詠唱』のフル活用で、いろいろな支援スキルを重ね掛けしてきた。でも、探索中に魔力が尽きたことは一度もない。



「勇者パーティーの力になれてるって、思ってた。ついさっきまでは」



けど、現実は。



「……はぁぁぁ」



とはいえ、いつまでも落ち込んではいられない。考えるべきはこれからどうするか。それだけのはずだ。



「よし! ここは無理にでも元気を出していこう!」



俺は気持ちをムリヤリ切り替え、大陸最大の王国『ワンズ』へ向けて歩き出した。ここからなら、2日も歩けば着くだろう。



「王国の冒険者ギルドなら、新しい出会いもきっとあるさ!」



自分をはげましながら、歩みを進めようとしたが。



「おっとっと。ここは慎重にいこう。久しぶりのソロだしな」



状況に応じて適切なスキルを使う。冒険の基本中の基本だ。



「まずは、エンカウント率の設定だな」



俺はメニュー画面を開き、スキル『エンカウント操作』を使用。『出現率:低』に設定する。




『エンカウント率が 低 に設定されました』




システムメッセージが頭に響いた。これでオッケーだ。



「勇者パーティーにいた頃も、エンカウントの操作は数えきれないぐらいやったからな。手慣れたもんだ」



あたりの敵が弱めなら、エンカウント率を上げて経験値を余分にゲットする。戦力が不安なときや、消耗をおさえたいときは、エンカウント率を下げて戦闘をできるだけ回避する。



「勇者パーティーは『世界の支援』ってヤツでコントロールできるらしいから、意味なかったけどな……ははは」



苦笑いしながら、俺は王国へ向けて歩き続ける。



エンカウント率低下の効果で、しばらくはモンスターに出会わなかったが。それがずっと続くわけではない。




「ギャギャギャギャーーーー!」



「グギャギャギャギャ!」



「グギャッ! グギャッ! グギャッ!」




俺の前にコボルトが3体出現した。



「支援スキルは……使うまでもないか」



さすがに楽勝だ。『支援役』とはいえ、腐っても勇者パーティーにいた人間だからな。



俺は護身用のショートソードを抜き、コボルトたちを切りつける。




ズバッ! ズバッ! ズバッ!




「ウギャギャギャーーーーー!」



「グギャーーーーー!」



「ノギャアアアアーーーー!」




コボルトたちはあっけなく倒れた。




『6の経験値を手に入れました』



『6のスキルポイントを手に入れました』



『レベルアップ! ロベル・モリスのレベルが20になりました』




「おっと、ちょうどレベルのタイミングだったか。ラッキーだな」




『スキル『エンカウント操作』がチート覚醒しました!』




……ん? 



「今のメッセージはなんだ? チート覚醒?」



そんなフレーズ、これまで聞いたこともない。



ステータス画面を開き、『エンカウント操作』の項目を確認してみると。



「……なんだコレ。できることが増えてるぞ」



今までの『エンカウント操作』でできたのは、出現率を『高・標準・低』、3つの中から選ぶことだけだった。それが、今では。



「『ゼロ』と、『インスタント』?」



初めて見る選択肢が、2つも増えている。



「『ゼロ』ってことは、モンスターとのエンカウントをなくせるのか?」



だとしたら、メチャクチャありがたい。ザコとのエンカウントを完全カットできれば、ボス戦までに全力を温存できるわけだ。これからどんなパーティーに入ったとしても、大いに役立つだろう。



ただ、それ以上に気になったのは。



「こっちの『インスタント』っていうのは何だ?」



まったくピンと来ない。



「とりあえず、試してみるか」



俺はスキル『エンカウント操作』を使い、『出現率:インスタント』で設定してみた。



すると。




『種類・数・瞬殺するか? を選んでください』




追加でシステムメッセージが表示された。



「『種類』を選ぶってことは、もしかして好きなモンスターと戦える? 『数』はまあ、そのまんま出現数だろうけど」



しかし。



「最後の『瞬殺するか?』っていうのはなんだ?」



うーん。結局、使ってみないとわからないな。



「よし。ここは慎重にいこう。まず、ザコ中のザコを設定だ」



設定方法は、こんな感じか?



「種類はコボルト、数は1体、瞬殺するか? はイエスで」



俺が宣言した瞬間。




ポン!




いきなりコボルトが1体現れたかと思うと、




バシュッ!




瞬時に消し飛んだ。




『2の経験値を手に入れました』



『2のスキルポイントを手に入れました』



『ポーションを1コ手に入れました』




「……なんだこりゃ」



どういう仕組みなのかはわからない。でも、何が起きたのかはわかる。



「『瞬殺するか?』をイエスにすると、呼び出したモンスターは戦闘に入る前に勝手に消滅する。でも経験値とスキルポイント、アイテムなんかは俺のものになる」



……マジで?



「しかもこれ、もしかして何度でも使える?」



俺はもう一度、スキル『エンカウント操作』を使用。『出現率:インスタント』に設定する。




『種類・数・瞬殺するか? を選んでください』




さっきと同じシステムメッセージ。1回ポッキリではないらしい。



……それなら。



「もしかして。こんなメチャクチャな設定でも、通ったりするのか?」 



思いつきで、とある伝説のモンスターを試してみる。



「種類はプラチナメタルゴブリン、数は1,000体、瞬殺するか? はイエスで」



このモンスターの存在は、たまたま読んだ古い書物で知った。



出現率は激レア。運よくエンカウントできても、鉄壁の防御力と耐性に加え、高速移動であっという間に逃げられてしまう。倒せる機会は、人生で一度あるかないかのレベル。でも倒すことができれば、信じられないほどの経験値とスキルポイントが手に入るらしい。



「まあ、さすがにそんな都合のいい話は――」




ポンポンポンポンポンポンポンポンポンポン! 




いきなり俺の周りを囲うように、プラチナ色に輝くゴブリンが大量に現れたかと思うと。




バシュッバシュッバシュッバシュッバシュッバシュッバシュッバシュッバシュッバシュッ!




片っ端から盛大に消し飛んでいった。




『100,000,000の経験値を手に入れました』



『100,000,000のスキルポイントを手に入れました』



『レベルアップ! ロベル・モリスのレベルが144になりました』




「えっ」



なんかシステムメッセージが、とんでもないことを言ったんだが?



「一気に100レベル以上アップしたような……?」



ついさっきまでは、レベル20だったのに。



今ではもう、レベル144。




……マジで?




「もしかして俺……なんかすごいこと、やっちゃったかな……?」

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