はじまりへ タンポポ

第1話 はじまりへ タンポポ

私はハッとして、まだ飛ぶのをためらう綿毛のタンポポのそばで微笑んだ。

「優しいね」

タンポポの綿毛に話しかけると、綿毛は嬉しそうに空へと飛んでいった。

高く空へ。

ただ、まだ空へ飛ぶのをためらう綿毛もいた。

空から綿毛たちは言う。

空はきれいだよー。

風は優しいよー。

旅にいこうよー。

気が向いたらねー。

私はハッとして、まだ飛ぶのをためらう綿毛のタンポポのそばで微笑んだ。

「優しいね」

タンポポの綿毛に話しかけると、綿毛は嬉しそうに空へと飛んでいった。

高く空へ。

……。

こうしてタンポポの綿毛たちはみんな旅に出た。

それから私も歩きはじめた。

道端で、タンポポのお母さんは静かにみんなの幸せを祈っていた。