怒り
「なに、してるの?」
由奈が光の無い目で不良っぽい人たちを見ていた。
場の空気がガラッと変わったと言ったがそう感じていたのは僕だけだった。いや気づいていたのは僕だけだった。由奈は怒っていたのだ。
「お〜来た」
不良男は由奈にヒラヒラと手を振っていた。
不良男はニヤニヤしながら僕を横目に見ながら言った。
ボブ美とピアス女はつまらなそうにしている。
「君さっき言ってたよね?頼りないし、気が弱いって、嫌々お腹すいたから一緒に来たってことでしょ?」
この瞬間、僕は体から一気に血を抜かれたようになり力が入らなくなって目の前が少しずつ暗くなっていった。
僕はこんなにも由奈に嫌な思いをさせていたなんて、、、、もう嫌だ、消えたい。喉がパリッと乾いている。そんな中振り出すように力込めて言おうとした。
「ごめんなさい、そんなに行きたくないなんて思ってな_______________」
バチン!!!!
鈍い音が響いた。
突然の事で動揺する頭を何とか回転させ分かったことは
由奈が不良男の頬を叩いたのだった。
なぜ?由奈は僕が嫌いだったのでは?なぜ叩いたのか。
「痛った、、何すんだよ!」
由奈は肩で息をしていた。
目を見開いて不良男を見ながら言った。
「ちがう!もう帰って!」
ピアス女とボブ美がオロオロしていた。
「ね、ねぇもう帰ろうよ?」
「そうだよ、なんかこの女やばいし」
ピアス女が不良男の袖を引っ張っている。
「もう冷めたわ、お前きめぇな、自分で言ったことも覚えてないのかよ」
男は叩かれた頬をさすりながら言った。
「行こうぜ」
男は席に戻り食べ終わったあとのトレーをそのままゴミ箱に突っ込んだ。怖すぎる、、
女の子二人は男の両隣を歩きながら、チラチラと振り返りながら由奈を見て、階段を降りていった。由奈は動じることなく、その人たちがか階段をおりるのを見ていた。
すごく怖い。もう会いたくない。次会ったら絶対ご先祖さまに訪問することになる。
不良っぽい人達っていうか、もう完全に不良だったし。その人たちが退場した。
「ねぇ、、その、さっきの話はちがうの、、」
由奈が蒼白しながら、そう言った。
「わかってるよ、、、僕頼りないもんね。気づかなくてごめん。」
自覚はしていたがいざ言葉にするとすごく辛い。自分の弱さ、惨めさをひしひしと感じる。
僕はこんなにちっぽけだったんだな、なんでこんなことにも気づかないんだろう。
「ちがうの、、」
由奈は涙目になっていた。
きっとこれは由奈の優しさだろう。こんな僕は由奈ぐらい優しい人ではないと誰も構ってはくれない。けれど、いくら優しいと言ってもこんな僕では嫌気がさすだろう。ここで由奈の気持ちを理解して、僕から解放させてあげるのが最善だろう。由奈は優しいから、自分からは言えないのだろう。
「由奈、気づかなくてごめん。俺の事はもういいからさ、他の人の所に行っていいよ。」
僕がやるべきことはこれなのだろう。由奈、今まで迷惑かけてごめん。これからは迷惑かけないよ。
「違うって言ってるでしょ!」
「ゴフッ!?」
いきなり胸のあたりを殴られた。
由奈は泣きながら怒っていた。また僕は何かに気づかなかったのだろうか、何か気に障ることをしてしまったのだろうか。頭を巡らせていると由奈が涙で顔をぐしゃぐしゃにして、言った。
「春樹はいつもそう、自分を低く見ててすぐごめんって言うし、何か言ってもすぐ否定的になる、自分なんかって思ってるんでしょ?!何言っても分かってくれない!」
「ごめん、、気づかなくて」
これしかもう言えない、由奈は僕のこんなところが嫌いだったのか、そこを理解して欲しいからちがうと言ったのか。どんどん苦しくなってきて言葉が出てこない。喉に蓋がされているようだった。
「もう、今日は帰る、、、」
由奈はカバンを持って、早歩きで階段を降りていった。僕は何も考えずにいてただ、由奈が残したハンバーガーとポテトを食べていた。
ポテトはまだ温かかったがどこか冷めていたような気がした。
シェイクはドロドロに溶けて牛乳のようだった。
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由奈視点
なんで怒っちゃったんだろう、、、春樹あたしから離れないよね、さっきの不良たちのせいで春樹に変な誤解させちゃったじゃない。絶対許さない。不良たちにあの子彼氏?って聞かれて照れて、色んなことを言ってしまった。
そして寄りにもよってそれを本人に伝えるとかほんとに最悪。
確かに春樹は気も弱いし、頼りがいがないけど
嫌いじゃない!むしろ好きだし?さっきは春樹に怒っちゃった、いくら春樹でも自分を卑下しすぎなのよ、、こんなに好きなのに否定ばっかされてると、私が好きなのがバカみたいじゃない。けど、どうしよう春樹に対してすごく怒ってしまった。あの性格だと、絶対元から嫌われているって勘違いしちゃう。あの時はいくら不良たちに恋人と揶揄われたといえど、照れてしまい否定してしまっただけだ。
「はぁもうどうしよう、、、、」
私はベットにぽすんと飛び込んで言った。このままでは絶対に春樹とは男女の関係にはなれない。ましてや今までどおり接せない。
「もう、別にどうでもいいし!」
私は自分に嘘を付いた。
このあと、こんな意地を張らなければよかったと思う事態が起こる。
次の日
朝、私は春樹と目を合わせられなかった。
春樹は休み時間になっても机に突っ伏して寝たままで、何も行動は起こさなかった。
私から話しかければいいもののプライドという邪魔なものがあり、それを許さなかった。
けど春樹と話せないのはすごく寂しい。
心にぽっかり穴が空いた気分だ。
けどきっと春樹が話しかけてくれて、そうしたら私は謝れるだろうそう思っていた。
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