第12話

「グレンさーん」


 レイネたちの買ってきたご飯を食べていると、窓口のキャスティから呼び出しがかかった。

 行ってみると、結構な額のお金が積まれている。


「こちら、インフェルノモルのドロップアイテムの買取代金になります」


「分かってはいたけど、やっぱり多いな」


「それはもちろん。インフェルノモルは、だいたいC~Bランクくらいが対象のモンスターですから」


「まだ冒険者ランクはあがらないか?」


「Dランクまではもう一歩ですね。実力は十分ですが、一応決められた条件がありますから」


「だよな。あ、そうだそうだ。ネミリー!」


 俺は席に座っていたネミリを呼び寄せる。


「はいさ。どしたの?」


「アンデッドスパイダーの毒袋、持ってたよな?」


「あー、あのぽよぽよね。はい」


 ネミリが手渡そうとしてくるので、俺は慌てて回避する。

 ホント、何で素手で持てるんだよ。


「死ぬわ」


「あ、そっか。はい、キャスティ」


「あの……私も死にます……」


「あ、そっかそっか」


「お前さ、キャスティのことなんだと思ってたの?」


 キャスティが黒い袋をネミリに差し出す。

 毒系のアイテムを入れる専用の、特殊な素材でできた袋だ。


「こちらに入れてください。買取代金、今すぐにご用意しますね。それからこれで、おそらく冒険者ランクが上昇するかと」


「おー!おめでたいおめでたい」


 毒袋を手放したネミリが、俺に拍手を送ってくる。

 これで冒険者ランクはD。

 圧倒的なスピードで上がっている。

 次はC、そしてその次は一旦の目標であるBランク冒険者だ。

 この調子なら、あと数か月のうちにダンジョンへ挑戦できそうだな。


 もろもろの手続きを終え、家へと一度戻る。

 ここからまたモンスター狩りへ出るのは大変だし、あまり頑張り過ぎて疲れてしまってもよくない。

 というわけで、3人で街を歩いてみることにした。

 レイネもネミリも、まだこの街に慣れていないので、基本的なことは伝えておこうというわけだ。


「まず、俺たちの家があるのは街の東側。かなり端の方だな。静かな住宅街になってる」


 場所によって大きく表情を変える街を、ゆっくりと歩いていく。

 街は大きく東部エリア、西武エリア、南部エリア、北部エリア、中央エリアの5つに分けられ、東部と西部は住宅が多い。

 南部は食料品や装飾品、雑貨などありとあらゆる店が建ち並ぶエリア。

 北部は鍛冶師を始めとする、職人たちが仕事をするエリアだ。

 そして中央には、冒険者協会の支部など重要な建物がいくつか建っている。


「南部はにぎやかですね。こういう活気がある雰囲気、私は好きです」


「私は静かなとこがいいなー。うるさいと眠れないもん」


 あーだこーだ言いつつ、2人とも楽し気に街を見てまわる。

 時おり買い食いもしながら、のんびり街をまわって帰ってきた。

 夕食は、市場で買ったものでネミリが作ってくれるらしい。

 栄養取って、明日からも冒険者生活頑張るとするかな。

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