第6話

「ふう、だいぶ溜まったな」


 せっせとゴーレムを倒し、集まった石は合計で20個。

 デバフを受けた上で、これを抱えながらゴーレムを倒していくのだから、2人はやっぱり半端じゃない。


「さて、これを街まで運ぶか。3人で手分けして持とう」


「あー、ちょっと待って」


 ネミリがちょいちょいと俺の肩を叩く。

 何か変な感触だなと見てみれば、その手は猫のそれになっていた。

 ぷにぷにの肉球がついている。


「すごいな。ぷにぷにだ」


「ちょおっ!あんま触んないでよ。くすぐったい」


「悪い。で、何だ?」


「わざわざこの石を抱えて運ぶのは面倒かと思ってね」


 ネミリは肉球で石に触れる。

 すると、パッと石が消え去った。

 続いて2つ目の石に触れると、やはり同様に消え去る。


「何をしたんだ?」


「【肉球次元ニャニャニャラウ】。収納スキルみたいなものかな。私の肉球って、ちょっと違う次元の空間と繋がってるんだよ」


「ちょっと何を言ってるのか分からない」


「ほら、こんな感じ」


 グイっとネミリが肉球を押し付けてくる。

 吸い込まれるような感覚がして、気付けば全く知らない場所にいた。

 灰色の空間が広がっている。

 足元には、さっき消えた2つの石があった。


 ふと、また吸い込まれる感覚がして、俺は元の世界に戻ってくる。


「と、まあこんな感じ」


「いきなり人を収納するな。びっくりしただろうが」


「でも、ちゃんと出したりしまったりできるのは分かったでしょ?」


「まあな。こんな役に立つスキル、何で早くに使わなかったんだ?わざわざ石を抱えて戦うこともなかっただろうに」


「てへっ、すっかり忘れてた」


 ネミリがぺろっと舌を出す。

 俺ははぁっとため息をついた。

 が、レイネが申し訳なさそうに口を開く。


「あのー、ご主人様。私も忘れていたことがありまして」


「どうした?」


「【獣化ネデア・第一形態】」


 スキルを発動したレイネは、あっという間に小さな白猫になる。

 俺の足元にちょこんと座り、にゃーと一鳴きしてから言った。


「このように、私たちは獣の形になれるんです。この小さな猫の形なら、今の家のままでも寝る場所に困らないかなと」


「なるほど……。ネミリもなれるのか?」


「もっちろん。【獣化ネデア・第一形態】」


 ネミリの方は黒猫になる。

 確かにこれなら、あの家でも十分に寝られそうだ。

 慌てて引っ越しする必要もない。


「封印が長かった影響で、私たちは結構忘れていることも多いんです。それに力も戻りきっていません」


「……それで戻りきってないのか?」


「はい。ですから、今回のように忘れていたということも多々あるかと……」


「分かった。心得ておくよ」


「ありがとうございます」


「気にするな。そしてネミリは丸くなるな。寝るな」


「にゃー……。石は……しまってあるから……グレンが……抱っこして帰っ……ふにゃぁ……」


「……ったく」


 完全に寝に入った猫状態のネミリを抱え、そしてレイネにも手を差し出す。


「えっと……ご主人様?」


「いいから。街まで運ぶよ。戦闘で疲れて……はいないだろうけど」


「は、はい。疲れてません。ですから……」


「いいよ」


 俺はレイネもひょいっと抱え上げ、ゆっくりと歩き出した。

 2匹のぽかぽかと温かい体温が伝わってくる。

 白猫と黒猫を抱っこして、俺は街へと戻った。

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